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【空港送り】ハイヤーサービスはできてますか?

  目 次

緊急事態発生

「お気をつけて行ってらっしゃいませ!」

深々とお辞儀をし、海外出張と思われるお客様を都内から成田空港へお送りすると、それまでの約1時間 若干気を張って運転した気持ちがふっとゆるんで思わず、ふーと息がもれます。

そのままハンドルを切り東関道へつながるレーンに入り、ゆっくりアクセルを踏みこみながら帰りはいつもの酒々井で一息いれよう

一つの仕事から解放され、酒々井のPAの看板が目に入ってきたころには、その解放感は最高潮に達していくようになります。

そしてPAに入る分岐で左ウインカーを点滅させました。

と、その時です。
いつもの聞き慣れた車載の携帯の音が突如設定していた振動とともにけたたましく鳴りだしました。

営業所からかな・・

あわててハンドルを右手で握り着信者を確認できないまま携帯を耳に押し当てると、電話口にはなにやら聞き慣れぬ声

「申し訳ないが成田空港に来てもらえませんか、羽田に行ってほしいので・・・」
さきほど降車されたお客様からでした。

「はい承知致しました。少々お待ちください」

こういう時は「どうしたのですか」などと相手の状況をうかがう余裕などありません。
先ほどの解放感は一瞬にしてどこかに吹き飛んでしまい

この新しいミッションのおかげで頭は完全にスイッチが切り替わりました。
「すまないね。」と客様は返事をされたあと電話がきれました。

空港に引き返す

さて、どうする? どうやって空港に引き返すか・・

当然ですが、高速道路はUターンして戻ることはできません。酒々井PAから一番近い出口でいったん高速を降りて再び乗りなおさなければなりませんよね。

ナビで見ると「佐倉」が直近の出口。
通常だとここから約10分、佐倉から成田空港まで20分。
トータル30分くらいはかかるところをちょっと飛ばしていけば5分から10分は短縮できるか・・・

高速の降り口がはっきりしたため、PA内をそのままスルーしてアクセルを強く踏みなおし、本線に合流すると

しかし・・・いったい何がおこったのだろう

お客様の会社は本社が地方都市にありました。
フライトをキャンセルするほどの出来事といえば、何か会社で重大事故がおこったか・・・親族に不幸があったのか・・・いずれにしてもただ事ではないはず。

緊急事態とはいえ、自分に直接降りかかった問題ではないときは興味本位の気持ちが先行してしまうものですね。

空港でお客様に会えば、何が起こったのか、その原因ははっきりするでしょうが、ああでもない、こうでもない・・と身勝手な考えが頭の中に次から次へと、止めどなく浮かんでは消えていきました。

成田空港はセキュリティの検問がなくなったおかげで、そのままスルーし、第二ターミナルの出発階レーンでアクセルを少し強めにふみこんで速度をあげつつ、車寄せレーンに突入し先ほどお客様が降車されたあたりまで近づくと、スーツケースを手にして立たれるお客様の姿が視界に飛び込んできました。

「お待たせいたしました」

荷物をトランクに積みなおして後部座先へドアサービスでご案内し運転席にもどると

「すまないが、羽田空港へ向かってくれるかな」

そう指示される声が私の背中にささりました。
「はい、かしこまりました。」

フライトをキャンセルした理由

呼び戻された理由を私がいち早く聞きたがっていることを察してか、車を発進させるとすぐに口を開かれました。

「いやーまいったね。パスポートを忘れてしもうた・・」
「はい、ええ?」

あまりに唐突に、でも、小さい子供がいたずらがばれてちょっと恥ずかしい・・というようなそぶりをみせながら、さらに言葉が続きました。

「間違えて家内のやつをもってきていて、出国審査の時に知らずに出してみてわかったんだよ。
いやー失敗した。カバーが家内のと同じだったんでね。」
「そうでしたか・・・」
「今度の出張はベつにキャンセルしてもいいんだけど、現地の人間がいろいろ準備しているというから・・・」
「はい・・・」

とにかく話に相槌を打つしかありませんでした。

私の脳裏には、お客様が差し出したパスポートが本人のと違っていることを空港職員から指摘されて
ありやまぁ・・と驚いているお客様の顔が勝手に映像になっていました。

さぞかし驚かれただろうに・・

「以前中国でも似たようなことがあってね。
それは私じゃなくて部下の一人だったんだが、案内人に預けたパスポートを受け取る際に誤ってほかの人のパスポートを渡されていたことに気づかずにいて出国の際にそれが発覚して難儀したことがあったんだが・・・まさか私がね・・いや~失策だった。」

この失態の事実を知る人はお客様の奥様と秘書、そしてハンドルを握るこの私しかいない・・
思わずこのお客様のアクシデントに、気の毒に・・・といった同情の気持ちが沸き起こったのには我ながら驚きました。

問題が起きた後の対処の仕方

しかし、それはすぐに余計なお世話であることがわかりました。
「パスポートは羽田に送ってもらうように手配したので。ちょうど羽田から深夜出発する便が取れたというので、それで行くことにしたよ。」

そうなんです。

お客様は私が成田空港に再び戻るまでの30分くらいの時間に毎回乗り付けている航空会社に頼んでパスポートをすぐに空輸してもらうように手配をし、(こういう芸当ができるのは、やはり企業トップの発想でしょうね。)秘書には、別便の手配と現地到着時間変更の連絡を指示。すべての手配は終わっていたのです。

迅速な対応と処理、そして別段それを誇ることもされず、実に淡々と落ち着いた態度。

私の方が内心大騒ぎになっていたんじゃないか。
もしもこの心の動きを知られたら・・
パスポートごとき忘れて大騒ぎするの?
修学旅行の学生じゃあるまいし・・ハハハ・・
鼻で笑われるに違いない・・

そう考えた途端、先ほどの同情の気持ちは一瞬にして恥ずかしさに変わってしまいました。

やはりトップに立つ人は想定外の問題が生じたとしても、その対処、対応に的確な判断を下し迅速に行動に移している・・その現場の一つを見せられた感がありました。

隠れたハイヤーサービスはできてますか

この話、役員車を担当している人からすれば運転手である私のドライバーとしての姿勢に問題があると指摘してくるかもしれません。

会長や社長を担当する役員運転手であれば、空港送りの場合、搭乗した航空機が離陸するまで車を空港内に待機させ、突然の予定変更にも迅速に対応できる準備を怠るなかれ・・・というのが基本姿勢じゃないかというものでしょう。

空港のVIP口の駐車場では、そうしたことをきちんと行っているドライバーをみかけます。
確かにその通りですよ。

実は、空港にもどるようにとの連絡を受けたとき、こういう不測の事態が時としておこるからこそ空港送りのドライバーとしての基本行動姿勢があるんだなと少々反省はしていたのです。

私の言い訳

まさかこんなことが起こるとは・・・不覚にも・・
そのまさかに備えるのも隠れたハイヤーサービスのはずだった・・

でも言い訳はあります。

役員車なら、搭乗機が離陸したあとは基本的にお迎えまで次のスケジュールがなくなるでしょうから、心置きなく空港で待機できる時間的余裕がある。

しかしハイヤーの場合は現実的に言って、空港までお送りしたら、すぐさまとんぼ返りし、早く車両を営業所にもどして伝票を締めないと、次の仕事の準備ができないのです。

お客様の搭乗する飛行機が離陸するまで待機する時間的余裕がない・・というのが本音です。
そこが役員車とハイヤーとの違いだと思うんですが・・

いやいや、それはあなたやあなたの会社がやってることで、うちは違うよと、そう言われる方もおられるかな・・??

いずれにしても
この空港送りの際の隠れたハイヤーサービスについて考えさせられた事件でした。

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