都内に営業所を構えている会社にとって
成田空港の送迎はおいしい仕事の一つ。
なんといっても距離が出ますからね。
片道が70キロ以上になります。
ハイヤーの料金体系は、会社によって異なりますが、料金の基準は使用時間と距離。
また、乗務員の給与にも関係してきますから、長距離運行は「おいしい仕事」になります。
タクシーではせいぜい二人分のトランクを積み込むのでせいいっぱいですし、特に海外からの招待するお客様となりますと、タクシーではその場で料金を請求されますからお客様に失礼となります。
さらに、お客様をエスコートする人がいない場合もありますので、ハイヤーの需要が生じます。
ハイヤーは何もセダンだけではなく、ワンボックスタイプの車もあり、通称「ロング」とか「デカ」と呼ばれている10人乗りのハイエースを保有している会社もあって、小グループの送迎にもってこいなんですね。
成田空港までは都内からだと、ゆうに1時間はかかってしまいます。東関東自動車道を利用するのですが、三車線で、しかも直線コース、見通しもよいことから運転しやすいのですが、
逆にそれがあだとなって、寝不足や、食後に乗務することになると、眠気ゆえに地獄のロードと化すことがあるので気を付けなければなりません。
私の場合、眠気をもよおしてくるとアクセルの踏み込みが弱くなり段々と車間距離が開いてきます。また、車が極端に右に寄ったり、左に寄ったりし始めるのです。
さらにあくびがとめどなく出てくるので、
お客様に見られない様にルームミラーの位置をあらかじめ変えておかなければなりません。
太ももをつねったりしますが、ほとんど効果なく、実車中はとにかく事故を起こさないように、いつもよりもハンドルをしっかりと握りしめて、祈るような気持ちで運転することもあるのです。
最近では車内にガムやウェットティッシュを常備して、不測の事態に備えるようになりました。
それでも、眠気に勝てない時はどうするか。
ある時、80キロ制限の高速道路を、気が付いてみたら60キロも出さずにふらふらと走っていました。空車でしたが、一仕事終えて気が緩んだのでしょう。
さすがに、このまま運行していては間違いなく事故に合うと、身の危険を察知、パーキングエリアに車をつけました。そして営業所に連絡し、事情を説明して仮眠をとりました。
デスクは乗務員が無事に事故なく任務を全うし、帰庫することを何よりも願っています。
遠慮はいけません。
「ちょっと休ませてほしい」と率直に言ってしまいましょう。自分の体は自分しかわからないからです。
おいしい仕事だからと言って、油断すると思わぬしっぺ返しを食らいます。本当に気をつけましょう。
今後、東京五輪招致で羽田空港が今以上に施設面で充実してきますと、ますます利用客は成田から羽田にシフトしていきますから、この成田空港の送迎仕事は縮小していくことでしょうね。
また一つ、おいしい仕事がなくなるのかと思うと、なんとも複雑な心境になりますが、時代の流れには逆らえません。
ハイヤー会社も、この変化に柔軟に対応できなければ、他業種と同様、生き残ることはできないのですから。