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コロナ禍によるインバウンドの消滅、企業のリモートワークの定着などで人の移動が激減した影響による車利用の減少。このところ、ハイタク業界でもマイナス要因の情報しか耳に入ってこないので気が塞がります。
タクシードライバーはそんな中でも果敢に創意工夫をして売り上げを維持している人を見かけます。しかしハイヤードライバーはというと、自分の努力が直接実入りに反映されることが少ないために、こういった事態に手をこまねいて見ているしかなく、とにかく「忍」の字、流れに任せるしかないというところ。
減車、休車を余儀なくさせられるあまり、人によっては空いた時間を活用して副業をする人もちらほら見受けます。生活を守るために、生き延びなければ・・・とにかく家族のために、子供のために稼がねばと必死になります。
イースタンエアポート、ハロート―キョ―が日本交通の傘下に
ところで、ここにきて個々人の忍耐以上に、会社自体がこのコロナ禍の波に飲まれ、政府からの公的資金援助を受けつつも、息も絶え絶えな状態から、とうとう底に沈んだまま自力で浮上できなくなってしまった会社が出てきました。
2021年3月1日付けで、イースタンエアポートモータース株式会社が自社の発行株式を日本交通に譲渡し、運営を引き継いだというニュースです。また、先月2月中旬には、株式会社ハロート―キョ―が営業権の譲渡を申請し、認可が下り次第日本交通傘下に入ることになるとのこと。
イースタンエアポートといえば羽田空港においてパイロットやCAなど空港関係者の送迎を主に行ってきた会社です。会社概要を見ると、1961年設立で、2011年に岡山県に本社を置く両備ホールディングス株式会社の子会社となっています。ハイヤーの保有台数は95台と、規模としては中堅どころ。
他のハイヤー会社と違って、「空港」という環境に大きく依存しながら営業してきた会社だけに、この未曾有の事態を乗り切るすべをなくしたのだ・・・とうとうきたな。ネットニュースでこの知らせを目にしたときに即座に感じたことです。何せ航空業界自体がこのコロナ禍で最も経済的な被害を受けた業界の一つに数えあげられるのですから、そこを営業の中心拠点としている以上、運命を共にせざるを得なかったようです。
仮に会社自体に余力がり、インバウンドの回復が見込めるオリンピック開催まで何とか耐えたとしても、そもそもこの長引くコロナ禍で、航空業界が従業員の多くを一時的に他業種へ出向させている中ですから、今後コロナが終息していくにしても以前の状態に復帰できるとは到底言えないと見て決断したものと推測されます。大変厳しい現実を見せられました。
受け入れた日本交通の今後は
ただし、受け入れた日本交通も、今後どのように吸収した会社を切り盛りしていくのか注目しています。
私が昔務めていた会社が経営危機に瀕した際、このままテコ入れもせずにいたら倒産して業界全体に悪影響を及ぼしかねないと、設立当初取引があった会社が吸収合併に名乗りを挙げて引き受けてくれたため、事なきを得ました。しかし、その後どうなったかといえば、採算の取れない営業所は閉鎖され、いわゆるリストラが敢行されたのです。私もその後1年して会社を去りました。
このように日本交通も、もしかしたら業界最大手として、従事者の雇用を守り業界の安定を図るという社会的責任から吸収に踏み切ったのかもしれません。しかし、空港関係者の送迎業務については、実はかつて大手四社が手掛けていた時期があったのです。ただ、景気の悪化とともに航空会社から請け負う単価が一般のハイヤーよりも大幅に安くなったことで採算が合わなくなったことを理由に手放した経緯があるのです。
ですから、コロナが終息に向かい東京五輪開催にGOサインが出されれば、国内外の人の移動がにわかに生まれてくるでしょうから、五輪の終わる8月までの半年間は保有台数を維持しつつも、9月以降から整理をしていくようになるのではないかと私は見ています。
業界の再編は今後も続くか
国の支援を受けても、体力がない会社は容赦なく淘汰される厳しい時代になりました。それはハイタク業界に限ったことではありませんが、この非情な市場原理の中で生き抜くために、今後も今回の二社のように営業権を大手に譲渡申請する会社がさらに出てくることが予想されます。
コロナ問題がなくても、昨今のIT技術の飛躍的な発展のために、遅かれ早かれ我々の働き方が変わって来ると言われてきました。では、そのために準備している人がいるかといえば、そうなったらなったで対処すると考える人がほとんどでしょう。
特に50代以上の人の多くは将来に対する不安を抱えつつも、とにかく行けるところまで行けばよい、あとは野となれ山となれ、なるようにしかならんと、逆に説教されそうです。
ハイタク業界の経営陣は今後も頭を悩ます
ただ、従事者はそれでよいかもしれませんが、経営側はそうはいかない。今抱えている社員が露頭に迷わないように現状をどう乗り越えていくのか、そしてコロナ後のビジョン、営業戦略をどうすべきか、日々頭を悩ませているに違いないのです。
いずれにせよ、何もせずにただ止まっていては後退するばかりですから、必死に打開策を考え、生まれたアイディアは果敢に実行に移していく気概が今、個人にも企業にも最も必要な時なのだと思っています。