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ゴルフに対する関心なし
私はハイヤーのハンドルを握るまでゴルフというものに全く興味も関心もありませんでした。
「それは君、やったことがないから楽しみがわからないんだよ」
こんなふうに言われそうなんですが。
別にゴルフをする環境がなかったわけではありません。
前職の会社では、同僚に誘われて打ちっぱなしの練習場に行ったことがありますし、その後に仕事で必要になるかもしれないと、クラブセットも一式購入しました。でも、結局その会社を辞めるまでコースに出る機会はなかったのです。
そして、ハイヤーに転職後、仕事でちょくちょくゴルフ場に行く機会ができましたが、依然として私の中では、住む世界の違う人たちのやることだと関知せず、ゴルフ場送迎の仕事が入ると、終日現地で過ごす待機時間の使い方をあれこれ考える方を楽しみにするありさまだったのです。
折角買ったゴルフクラブ一式は,其の後押し入れの奥に仕舞い込んで陽の目を見ることはなくなり、数年前に、もう今後も使うことはないと見切りをつけ、中古買い取りの店で引き取ってもらいました。
余談ですが、ほとんど新品同様のクラブだったので、数千円くらいで引き取ってくれるだろうと期待していたのですが、査定額はたったの400円。
店員は私の不服そうな顔を見て、この査定額となった理由について丁寧に説明してくれたけど。だからと言ってこちらが納得いかないと言おうものなら、そのままお引き取り下さいとなることはわかっていたので、諦めて店員から貰い受けた小銭を握り、店を出たのですが、なんとも後味の悪い気持ちになりました。
ゴルフは贅沢なスポーツか
それにしても、ゴルフというスポーツは、時間とお金に余裕ある人がする贅沢なスポーツだとつくづく感じます。
実際そうじゃないですか
東京在住の人がゴルフをやろうと思ったら、ゴルフ場はほとんど都心から離れた隣接県(神奈川、千葉、埼玉、茨城など)に点在しているので、まず移動手段として車が必要ですね。
自家用でいく人もいますけど、もしハイヤーを利用しようものなら、終日借りて4万は下らない。
それから、コース1回プレー代金は2万から3万円
サラリーマンの平均小遣いは3.8万円程度(2021年調査)だそうですから、これで月1回やるにしても、1回のプレーで、ひと月の小遣い以上が飛んでしまう計算になる。
先日お客様に「都心に住んでいる人がゴルフをするとなると、結構かかかりますね?」と尋ねてみました。
すると、
「地方在住者は車が有れば30分圏内にいくつもゴルフ場があるのに比べ、都心部だとゆうに1時間は越える。しかもプレー代も高額だよ。一日潰れるからひと仕事。大変だね」
この役員さんは私と同じ目線をもっていました。
接待ゴルフの現場
ところが、役員の車を預かるようになると、私のゴルフに対する味方は随分と変化しました。
いわゆる接待ゴルフの現場をお客様と何度となく同行しているうちに、「ゴルフ=贅沢な遊び」から「ゴルフ=大切な営業ツールの一つ」に変化したのです。
まず、ゴルフでハイヤーに乗車されるお客様のほとんどは、会社の経費でゴルフをしていることがよくわかりました。
これはゴルフが業務の中に組み込まれていることを証明するものです。
ゴルフは娯楽ではなく仕事だということです。
それから、「接待ゴルフ」がやれるようになるには平社員ではダメだといいます。何らかの役職が必要になるわけです。社内規定に明記されているところもあるようです。
接待ゴルフの場合、営業が目的でありますから、取引先の企業において決裁権をもつ人でないと、経費をかけて場を設定する意味がないので、おのずと参加者は社長をはじめ、役員クラス、部長に絞られます。
社員5000人以上の大手上場企業ともなると、役員たちの仕事の半分はゴルフを通してなされているという現場を見ました。
ところが、中にはゴルフが嫌いな人もいて、ほとんどやらない、というか避けている人もいました。
それと、ゴルフが下手であっても務まりはしますが、仕事だからこそ、恥ずかしくないプレーをしたいということで、ゴルフの個人レッスンを受ける人もいるのです。
ある上場企業の役員さんは、ゴルフ場に向かう車中で
年間80回はやるね・・・とゴルフ好きを自慢していました。日曜日が年間52回ほどで、そのほかに土曜日や祝日もやっていることになります。
よく聞くと、その人の会社は本社が地方にあって、車で30分圏内にいくつもゴルフ場があるからこなせる回数なんだそうです。それこそ午前中にまわりきって、午後ゆっくり休むケースも多いと言ってました。
経費をかけてでもゴルフをやる理由
大変な経費をかけてゴルフをするのは、そこに企業間の取引がからんだ、まさに「仕事」だからだということなのですが、法人営業の観点からすると、相手企業の人となりを見定めるのにとても役立つ重要なイベントになっていることがわかります。
プレーの仕方で、経営者の性格、会社の勢い、社風までも感じ取れる。
取り巻きの部下達の様子を見れば、社員教育、そしてトップが部下に慕われているかなど、細かい部分も肌感覚で把握可能な場になります。
また、プレーのみならず、食事や入浴など、丸一日使って取引先との深いコミニケーションをとることで親睦も深まる。
こういうアナログな付き合い方は、ネット世代にはなかなか理解できないことかもしれませんが、取引金額が大きい企業間であるほど、信頼関係を深める意味でゴルフは重要なコミュニケーションツールだったのです。
こういう感覚は一般庶民ではわからない。
はたからみると、遊んでいるとしか見えないので、ゴルフにかかる経費だけを見て「贅沢だ」と批判したりするわけです。
ドライバーは外野席に座る観客のようにいつも傍観しているだけですが、このゴルフにまつわる人間模様も、よくよく目を凝らしてみてみると、なかなか奥の深い世界が広がっていることがわかりました。