走れ!東京ハイヤーマン 

あの社員はなぜNO.1なのか

先日、時折会う日本交通の方との情報交換をした際に
「これ見たことある?」 と、一冊の本を渡されました。

タイトルからいきなりモチベーションを上げてきます。
この本は2010年7月、マガジンハウスから出版されたものなんですが、
著者である井上健二氏は様々な業種から5人のNO1社員の仕事術を取材し紹介している本です。

1. 20年で市場規模5分の1.危機に瀕する着物業界で売り場を拡大させる男
2. 53歳で販売員の道へ。2200人の頂点に立つ、セールスマスター
3. リーマンショックの最中、販売最高記録を樹立。日本一アウディを売る男
4. 15坪の小さな街の本屋を日本一に変えた顧客の心を掴む書店員

そして5番目に紹介されているのが

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5.国内外のVIPたちから絶大な信頼を集めるハイヤードライバー

この本で紹介されている岩楯幸男氏は、かつて日本交通のハイヤー研修センター(HKC)で主任教官として後輩の指導に当たっていたといいます。

これまでハイヤーに関する話題を紹介した書籍を見たことがなかったので興味深く読ませてもらいました。

タクシー関連の書籍は多いのに・・

タクシー関連の書籍は結構ありまして、目立ったものを調べると
以下の通り

● 東京タクシードライバー
● タクシードライバー日誌 (ちくま文庫)
● 潜入ルポ 東京タクシー運転手 (文春新書)
● タクシー裏物語 現役ドライバーが明かすタクシーの謎
● タクシーほど気楽な商売はない! あなたにも今すぐ始められる悠々自適の年収800万円ライフ!
● タクシー運転手になって人生大逆転! (角川SSC新書)
● 人生と経営はタクシー運転手が教えてくれる
● タクシー王子、東京を往く。―日本交通・三代目若社長「新人ドライバー日誌」

このうち
「タクシーほど気楽な商売はない!
あなたにも今すぐ始め られる悠々自適の年収」(下田大気 著)は、近所にある図書館においてあり、借りて読んだことがありました。

ちなみにこの著者下田大気という人は直木賞作家の志茂田景樹さんの息子さんで破天荒な経歴の持ち主、

起業しては失敗、倒産を繰り返し自己破産までした人物で、その後タクシー乗務員となってリベンジの成功を遂げ、今年4月に行われた武蔵野市議会議員選挙で出馬し1363票で初当選しました。

日本交通の会長である川鍋一朗氏が自らタクシーに乗り営業した体験記は以前にご紹介したことがありましたね。
日交さんとの立ち話

日本交通ハイヤー乗務員の必読書

どうやらこの本は、日本交通のハイヤー乗務員になろうとする人には必読書になっているようなのです。

だいたい、昔からハイタク業界に足を踏み入れる人は、いわゆる「訳あり」の人が多く質も柄もかなり悪かった・・・(すべてではありませんが・・・)
私自身も転職組で、それこそ行き場を失い、たどり着いた島がこのハイタク業界であったという、いわば、典型的な「流れ者」といってもよいでしょう。

ところが、この本で登場する岩楯氏は父親もハイヤー乗務員としてハンドルを握っていて、子供の時からその背中を見て育ち、尊敬と憧れの思いを抱きつつ工業高校卒業後、建築関係の仕事に就くのですが、

ハイヤー乗務員になるために退社、大型トラックやトレーラーの運転手を経て、二種免許を取得し、26歳の若さで日本交通に入社。晴れて念願だったハイヤー乗務員になったのです。

筋金入りのハイヤーマン

いるんですね。こういう人が・・・

まさに 「筋金入り」とはこういう人をさして言うものだと感心しました。仕事に対する情熱、取組みが根本から違っているのです。

本では更に、経歴が続いています。

彼の日々の努力が目に留まり、出向先の企業から専属の運転手として引き抜かれ日本交通を退社、役員付運転手として6年働いた後に再び日本交通の門をたたき、今度は川鍋社長に直接履歴書を出して、自身の持つビジョンを社長にぶつけたといいます。

2005年35歳で三代目社長として就任した川鍋一朗社長にとって日本交通改革をどうすべきか考えあぐねていた時だった・・・
岩楯氏のカムバックは、ハイヤー部門の改革に大きく貢献してくれるであろうという期待で大歓迎したことでしょうね。

岩楯氏は自ら培ってきたハイヤーの仕事のノウハウを体系化してハイヤー研修センターを設立、新人乗務員の指導を開始したというのです。

氏に刺激を受けたのか、岩楯氏の入社した2007年の暮れに川鍋社長は周囲の反対を振り切って自ら1か月タクシー運転手を体験しています。

私が耳にしたエピソードの一つに
それまでハイヤー乗務員希望者は全員タクシー研修を2~3か月させていたのですが、これを辞めさせたというのです。

その理由は、タクシーとハイヤーでは運転の仕方が違う。仕事のやり方が違う

3か月タクシーの研修を受けるとタクシー式運転、思考が身についてしまい、それを体から抜くまでに3年かかる、という持論を展開し、ハイヤー専門の教育を新人乗務員にたたきこんでいたといいます。

ちなみに、最近kmに入社した方から教えていただきましたが、ハイヤーの新人研修過程でタクシー研修を3か月させると聞いたばかりです。
私も研修時にタクシーに乗りましたが、岩楯氏の観点はなるほど一理あるかもしれないと思いました。

ただ、私の場合は、東京出身でありながら、地理がわからなかったため、かえって地獄の特訓のようにタクシー研修に押し込められたことで覚えることに必死になれたのと、

お客様の対応を学んで度胸がついたことで、個人的にはタクシーを経験して良かったと思っています。

ハイヤー各社の色がだんだん鮮明に

今(2015年5月当時)、日本交通では入社して5か月間の研修を通して、運転技術や英会話試験、秘書検定資格取得などを経て教官による同乗試験にパスして初めて正社員として登用するといいます。

仮にその最終試験に通らないと1年間は契約社員として在籍し再び試験を受けるようにする、かなり厳しいシステムをつくっています。

業界のトップを走り続けるにはそれ相応の気概が必要ですし、高い企業文化を維持していくためにも入口のところでしっかりと教育をしなければならない。

そして、ゆるぎないトップブランドを創出しようと努力していることを感じました。

それはkmさんもやり方が違っても考え方は同じように思います。近頃採用している乗務員は大卒者ばかりなんだとか。

大学まで出て、ハイヤー運転手をやるのか、何のために大学で勉強したかわからんな・・・

ベテラン、古参の人たちは、トップの改革を斜めに見ている人も結構いるようですが。

しかし、変化の激しい今の時代、きちんとしたコンセプトや、企業文化を構築しないまま、なるようになる式に、手をこまねいてただ傍観していると時代の変化に足元をすくわれてしまうという危機感が経営陣にあるのかもしれません。

また、近い将来、企業の上場を視野に入れた経営戦略だとも考えられます。
2020年のオリンピックに向けた取り組みも今後注目されるでしょう。

 

ちょっと最近マンネリ化してしまい、仕事に張りをなくしているなと感じておられる方には、待機時間を使って一読するのに丁度良い本になりますよ。
きっと・・・


 

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