走れ!東京ハイヤーマン 

高速を降りてはいけない──ハイヤードライバーが学んだ「渋滞判断」の教訓

ハイヤーの仕事には様々な緊張の場面がありますが、中でもゴルフ送迎ほど神経を使う仕事はないと、私は思っています。
なぜか。

それは、ゴルフ場到着の時間を守れるかどうかで、その日のドライバーの仕事の評価の大半が決まってしまうからです。

配車伝票に記された「スタート時間」。この時刻にお客様を遅れずお届けできるかが、プロとしての力量を試される瞬間だと思っているからですね。

早朝出庫と渋滞との闘い

ゴルフ送迎は予約制のため、前日のうちに担当が決まります。私たち乗務員は前夜から営業所に宿泊し、早朝の出庫に備えます。これは、朝7時台にゴルフ場到着を求められる場合、お客様宅へのお迎えは5時台になることも珍しくありません。寝坊は許されないので、営業所の「起こし」にお願いして前泊するわけです。

※参照記事 → 裏方の仕事-起こし

週末の都心は交通量がぐっと減りますね。そこへきて早朝5時台ともなると、車はほとんど走っていない。それは首都高も同じです。ところが、7時半を過ぎると状況は一変するじゃないですか。特に行楽シーズンの連休初日などは、予測を超える混雑が発生するものです。

中央道を使うか、関越を使うかの判断やアクアラインを使って千葉方面に行く場合は、自然渋滞もそうなんですが、最も厄介なのが、突発的な事故渋滞。これが今回お話しする「判断ミス」の舞台となりました。

事故情報が出た瞬間、頭をよぎる選択肢

車を走らせながら、私は常に掲示板やスマホアプリで道路状況を確認しています。

GoogleマップやYahoo!カーナビの渋滞情報は、今や強力な味方となっています。これは言うまでもなく基本ですよね。
しかし、画面に「事故渋滞」の文字が出た瞬間、頭の中に浮かぶのは
「このまま高速にとどまるべきか、降りて一般道を走るべきか」
この判断をどうするかというもの。

高速の入り口の掲示板を見た瞬間、判断を迫られる場合、
首都高の分岐の手前にある掲示板情報から判断をする場合
要所要所の情報に対するとっさの判断力が問われることがたまにあって、これが運転手の評価を大きく左右します。

経験の浅いドライバーは焦ってしまい、つい高速を降りる選択をしがちじゃないですか。実は私も、かつてその一人でした。

「下道で行こう」が招いた大失敗

ある週末のこと。私は相模原にある相武木カントリークラブへお客様をお送りする予定でした。中央道を選んだのですが、掲示板に「稲城〜八王子間事故渋滞」の表示。すぐさま東名へルート変更を試みました。
ところが、その東名でも事故が発生していたのです。
目の前に青葉インターの出口が迫り、私は咄嗟に判断しました。「ここで降りて、一般道で行こう」と。ハンドルを切り、インターを降りました。
これが、大きな間違いでした。

選んだ幹線道路は片側一車線。しかもバス路線で、信号やバス停で何度も停車を余儀なくされます。渋滞を避けたはずが、かえって身動きが取れなくなってしまいました。

後部座席からは、お客様が「少し遅れるかもしれません」と先方に電話をかける声が聞こえてきました。背中にじっとりと汗をかいたことを、今でも鮮明に覚えています。
結局、予定より30分以上も遅れてゴルフ場に到着しました。

あのとき、先輩が言っていた言葉が頭をよぎりました。

「高速は簡単に降りちゃいけないよ」――もう手遅れでしたが。

なぜ「高速を降りてはいけない」のか

経験を積んで分かったことがあります。それは、都心から遠ざかるほど、並行する幹線道路が限られ、抜け道の選択肢がなくなるということです。

高速を降りれば、同じ考えのドライバーたちが一斉に一般道へ流れ込みます。結果、下道は大渋滞。信号待ちや右折待ちで時間を消費し、かえって到着が遅れることが多いのです。

一方、高速道路は片側二車線以上が基本。事故で仮に一車線規制になっても、時間はかかるものの確実に流れます。そして何より、信号がないというのは大きな利点です。
もちろん、大規模事故で完全通行止めになるようなケースでは、迷わず高速を降りるべきです。しかし片側一車線規制程度ならば、高速にとどまった方が結果的に早く着くことが多いということがわかりました。

判断の基準は「事故の規模」と「規制の内容」

では、どうやって判断すればいいのか。
ポイントは事故の規模を正確に見極めること。掲示板やアプリの情報を総合的に判断し、以下を確認します。

こうした情報を冷静に読み取り、「高速にとどまるべきか、降りるべきか」を判断する。これが、ハイヤードライバーの腕の見せ所です。実際走行中に情報収集することはなかなか難しいのですが、渋滞によって減速して走るようになると、うまく対応ができますね。

車線の取り方

高速に乗ったら、どの車線を走るのか
この見極めも結構重要です。

よく利用する高速道路であれば、場所によって走る車線を選定することで、時間短縮が可能となる場合があります。
しかし、経験が浅い場合はその見極めがなかなか難しい。
そこで一つ先輩に教わったのが、路線バス、特に空港方面にいくようなリムジンバスが走る車線を選択せよということでした。

理由はおわかりですね。
路線バスは毎日同じ道を走っているので、どの車線を走れば安定して流れることをよく知っています。そして、彼らは限りなく時刻表に則って走るよう心がけます。空港到着時刻が大幅に遅れようものなら、乗客からの厳しいクレームを受けかねません。
それで、渋滞時には運行管理センターからリアルタイムの渋滞情報をもらい、臨機応変の対応をしているからなんですね。

迷ったらリムジンを探してその後ろについていくことで、大方間違いはないでしょう。

お客様とのやり取りで判断する時

先着時間を守るというのは当然のことなんですが、
仕事をトータル的にみると、この車を利用してよかったな–と乗客に思ってもらう方がもっと重要なことがわかります。

お客様のタイプとして大きく二つに分かれます。
一つはドライバーに行き方すべてお任せするタイプ
もう一つは、結構道に詳しく、経路についてドライバーに訊ねてくるタイプ。

後者の場合は、渋滞時に自分の判断だけで経路を決めると、問題なく時間通りに現地へ到着すればよいのですが、判断ミスや不測の事態によって遅れて到着すると、なんらかのクレームが入ることがあります。

道路状況も重要ですが、乗ったお客様のタイプの見極めもポイントとなり、
上手に対話しながら経路を決定させることに成功すると、現地に時間内についたときには
うまくやったな・・という達成感をお互い共有できて、気持ちがほっこりとすることもあるのですね。

一番テンパるのが、ホスト役となり、お客様をお迎えしようと準備する部長や課長クラスの人が乗り込んできたケース。
この場合はなるべく行く先々の道路状況を共有するようなコミュニケーションがとれるのが理想です。

これがうまくできないと、相手は不安を抱えたまま長時間後部座席にいることとなり、それがストレスとなっていきます。
ここを上手にガス抜きする意味でも、
「●●までは順調に流れるようですが、××からは徐々に車が詰まる模様です。」
といった道路や運行状況を伝えながら運転することができると、相手はそれを聞いて時間の計算をしたり、お客様を迎えた後の段取りを構想したりできるので、リラックスできるというものなのです。

対応力のある人は、お客様に判断をゆだねる

一方、お任せすると言ってきたお客様であっても、やはり状況を共有する意味で、経路に関して言及する必要がありますし、進路を変更する場合は、その理由を簡単に説明した上で、この道を選択する旨を伝えていくことがポイントとなります。

「現在、事故渋滞が発生しておりますが、高速道路上にとどまった方が確実かと存じます」

と、根拠を添えてお伝えする。そうした丁寧なコミュニケーションが、お客様の安心につながるのです。

こうしたコミュニケーション力のある人は、上手に自分の責任を回避して、お客様の意向に沿った決定をしていきます。お客様が判断した結果こうなった・・と、その結果責任をお客様側にすることが上手なドライバーがいるのです。

私はどちらかというと「私が責任を取る」と鼻息荒いタイプなんですが、まったくスタンスが真逆で
とにかく責任を上手に回避して相手(お客様)にあくまで花をもたせるのです。

焦りが判断を鈍らせる 私の失敗ケース

振り返ってみれば、あの日の私は完全に焦っていました。「遅れてはいけない」という思いが強すぎて、冷静な判断ができなくなっていました。

高速を降りるという判断は、一見すると「積極的に動いている」ように感じられます。しかし実際には、焦りから逃げ出そうとしているだけだったのかもしれません。
運転技術以上に大切なのは、情報収集力と経験の積み重ね。そして何より、焦らない心です。

もしあなたが、事故渋滞に直面したなら。まずは深呼吸をして、情報を整理してくださいね。
掲示板の表示、アプリの数値、交通規制の有無。それらを総合的に判断し、「このまま高速にとどまる方が賢明だ」と思ったなら、迷わずそうしてください。たとえ渋滞の列に並ぶことになっても、それが最善の選択であることが多いのです。

「高速道路は簡単に降りてはいけない」

話が少し横にそれましたね。

ここで結論としてお伝えしたいのは、
高速は安易に降りて下道を走ると、かえって時間のロスを生む・・・ということです。

ただし、首都高は別ですからね。

都心の場合、特にラッシュ時においては良く知っている下道を使ったほうが早く目的地に到着するケースがあるので、十分気をつけてください。

謙虚さの中で、相手を気遣いながら、しかももの静かな自信がみなぎる態度、
そんな理想的なドライバー像を頭の中で描いています。

 

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