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聞かなかったことにする
朝方、普段より1時間早く家を出た日でした。
車に乗り込むなり、スマホをふと覗くと、息子からLINEの通話コールが鳴りました。
こんな朝早くになんだろうと、タップしてみると
「父さん、やっちまった~ おれ、コロナかもしれん・・」
「何だ?」
突然のコロナ感染宣言で一瞬思考が止まりました。
「どうした? 状況を詳しく教えてよ」
「やっちまったよ、
職場でコロナにかかった子がいたんだけど、後の検査で陰性になったというので、その子が遅番で帰る際に最終電車がなくなるから、家まで送ってやったんだ」
どうやらバイクの後ろに乗せて自宅まで送り届けたらしい。
「油断していた・・・ちょっと熱っぽくって・・・」
話を聞く限り、そのことが感染の主要原因とは断定しかねるところでした。
「何度あるの?」
「37度くらいかな・・味覚もしなくなってるし・・・」
微熱なら単なる風邪かもしれない。しかし「味覚がない」という言葉が引っかかりました。
これはもしや・・・
このご時世で、普段から細心の注意を払っていたのですが、もしも家族のだれかがコロナになったらどうするか、頭の中で一応シュミレーションはしてました。それがいざ現実となった時、自分の口をついて出てきた言葉は
「それ、聞かなかったことにするよ」・・・でした。
息子はいわゆるフリーターです。
彼の職場では過去に数人の感染者を出していたことを聞かされて知ってました。配達業務とあってか、常に換気はされているし、20代、30代のアルバイトで回していた環境だから、感染者が出ても身辺の濃厚接触者を追跡することまではしないといった対応を取っていました。
一方、自分の務め先は対応が真逆です。
家族に一人でも感染者がでれば、本人に症状が出ずとも自宅待機を強いる。
また、家内も同様で、パートで大手スーパーのレジ係として働いており、ここも家族に感染者が出たとなれば仕事を休むことになる。
だから、私としては、身内に感染者が出ると夫婦ともに最低でも1週間は仕事ができなくなるため、そうなると月の収入に影響を及ぼすことは必至だという危機意識がはたらいて、この事態を「聞かなったこと」にしたかったわけです。
経済問題が関係すると、なりふり構わず行動してしまうというのは人間の性なのか・・・あれこれ考えるよりも先に、直ぐに家内に電話を入れて事情を伝え、どうやって息子を隔離するかの指示を出しました。
我が家の隔離対策
丁度家の構造がうまい具合にできていました。玄関に立つとまっすぐリビングまで廊下がのびており、その両側に一部屋ずつ子供たちの部屋があります。またトイレ、浴室も隣合わせにあります。そして廊下突き当りの扉を開けるとリビング、さらに右側にわが夫婦の部屋と書斎という間取りですから、家全体をリビングに入る扉でニ分することが可能となります。
それで、息子をリビングに入れないようにして、下の娘を臨時に書斎で休んでもらうようにベッドを移動させたのです。
ちょうどそのころタイミングよく、コロナ感染者は、重症者でなければ7日間自宅待機から4日に短縮されたというニュースが耳に入ってきたところでした。医療現場の逼迫を緩和する対策と共に、いわゆるオミクロン株は弱毒化傾向にあり、症状も普通の風邪に似ていて、市販されている解熱剤を使用しても熱が下がるなどの情報から、今回の息子は単なる風邪なんだ。このように自分に言い聞かせ、家内にも「コロナにかかった」とは言わずに隔離するように対応を促したのです。
私以上に猛烈に反応したのは妻でした。
仕事を終えて家に帰ってみると、消毒剤やティッシュ、紙皿、紙コップなどを買い込んで、各部屋、そしてトイレ、浴室すべてにおいて完全消毒体制が敷かれていました。
いつも使用しているタオルは別々にして、リビングから出る時はマスク着用。最大限やるべきことをやったわけです。
息子のその後の経過
息子は二日後から熱が38度を越えました。しかし、あえて抗原検査やPCR検査をしませんでした。やったところで対処法は自宅隔離になるとわかっていたからです。
彼の職場も検査を強要してはいなかったこともあって、発熱してからは自宅で完全隔離状態にし、トイレ以外部屋から一歩も外に出さなかったのです。
問題は健全な我々が、いわゆる濃厚接触者となること。いや、もうすでに現実的になってはいますが、本人がコロナかどうかわからない。これが問題ではありますが、完全に開き直っていました。
コロナは若年層では症状こそ軽度ですが、感染者が出ることによる社会的な影響が大きいので、我が家のような対応をする人は表にこそ出ないけれど、結構いるのかもしれません。
今回のようなことがもしも1年前に起きていたら私も観念して会社に報告をして指示を仰いだことでしょう。
しかし、2年に及ぶコロナ禍で、しかも第6波の状況をみると、もうコロナの正体や症状、そして対処法もある程度確立しているので、今さら騒ぐこともないわけです。海外ではワクチン接種は強要しても、その後マスクすら着用せず普通の生活を始めているところも多いのです。
感染者が身近なところに出て感じたこと
コロナによる経済活動の影響の方がはるかに精神的ダメージを与えるものだと、自分の行動を振り返り思った次第です。
息子は、2日ほど高熱を出しましたが、幸いどっと汗をかいた後に急激に熱が下がり、ほぼ発症から1週間で元気になりました。そして他の家族には一人も感染者が出なかったので、ひとまず胸を撫で下ろし「勝利宣言」ができました。
しかし、本人はあれから一月近く時間が経過しているのにも関わらず味覚がない状態が続いています。
ただ、これに関してはお客様の知り合いがコロナに感染し、治ってからも約3ヶ月間味覚を失ったという情報を耳にしているので問題ないだろうとみています。
ただし、改めてこの「味覚がもどらない」という症状から、息子はコロナにかかっていたことが裏付けられました。
もしも、あなたの家族の一人が今コロナにかかったら、どういう対応をされますか?
シュミレーションをしておくことをお勧めします。