マンガみたいな話 2

もしもし、○○様ですか
今、別のエントランスに向かうために地下の駐車場に降りようと車を回したんのですが、グランドキャビンの車高の問題で駐車場内に入ることができないのです。
―――ええ、そんなことがあるか・・

相手は私の言ってる言葉を理解できていません。
車が地下に入れないって・・・
電話口の向こうでは
駐車場内に入れないなんて馬鹿なこと言っているんですよ
と、誰かに告げている声が漏れ聞こえてきます
「大変申し訳ありませんが
一階に出てきていただけませんでしょうか」

本来こういう要求はしないものですが、
この場に及んで、悠長なことは言ってられません。
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向こうもお客様を案内しなければならない手前
あれこれ文句を言っても埒があかないと察したのか
「わかりましたよ。こっちはもう出ているんですよ。
じゃあね、
山手通り沿いに車を回してくれる?」

「かしこまりました。少々お待ちください」
少々待ってくれと言い切ってしましましたが
山手通りといっても、自分が今どこにいるのかも混乱して、
頭の中に地図がかけていない状態でしたから
これからどうなるかわかりません
でも、私はもうこの時点で完全に腹をくくっていました。

救世主現る

「もしもし、アクシデントです!実は・・・」
次に連絡を入れたのは営業所
ことの次第を簡潔に報告して、指示をあおごうとしましたが
その時です。
後ろのトラック運転手が、駐車場の管理室に連絡をしたらと
ぼそっと進言してきました。
そうだ
その通りだ、何やってんだ俺は・・・
「すみません、また連絡します!」
デスクにはそう伝えて、すかさず、教えられた管理室に電話をしました。
必死に状況を説明し、とにかく駐車場の入口に来てもらうようにお願いしました。
管理人が現れると
実際に車が立ち往生している様子を目にして、ようやく状況がわかったらしく
「とにかく、この棒を取り去って車を中に入れましょう。
左の駐車場に入っていかず、右に抜けて行く道があるから
そのまままっすぐ行ってください。そうすれば
突き当たるから、そこを右に折れれば出口になっていて外に出られます」
よ~し!
助かった! これでいけるぞ!

この言葉で私は完全に生き返りました。
起死回生とはまさにこのこと
時計をもう一度見ると、約束の時間はすでに10分オーバー
後はとにかく何が何でも外に出る・・
体中に気が満ちていくのを感じました。
管理人は、もう一人の相方らしき人を呼び出して
脚立をもってくると、それによじのぼり、天井から釣り下げられた鉄棒を
慎重に取り除いてくださるのですが
この時間がなんと長かったことか・・・
「気を付けて下さいよ
もしも天井を傷つけますと、かなり高額な賠償になりますからね」
鉄棒が撤去され、別れ際、車に乗り込んだ私に
思い切り釘をさす言葉を投げてきました。
ありがたいアドバイスであっても
私はすでにどんなことがあってもお客様のところへ行くと
まるで火の玉になったように熱くなっていました。
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とにかくお客様の指定場所に一分でも一秒でもはやく車を到着させたい一心で、慎重かつ大胆に車を前進させていきます。
地下通路には、頭上に蛍光灯がならび
その下を潜り抜けるようにして走るのですが
時折現れる垂れ込めた防火用のスプリンクラーが
まるで牙をむくようにあちこちに点在し、
その下をくぐる時は
さすがに、がりっと音がしないものかと
思わず頭をかがめながら、はらはらドキドキものでした
まるで映画のワンシーンのようです。
みなさん、きっと私の姿を見たら、あまりにも滑稽で腹を抱えて笑ってしまうでしょうね

出口が見えた

200mくらい走らせると急に視界が大きく広がり
右手には、ここがお客様が当初指定していた地下エントランスだとわかる場所が現れてきました。
この場所は車の車高を気にするようなところではありません
大型バスだって余裕で入れるところでした。
馬鹿なこと言ってるよ
さっき電話口で聞こえてきたお客様の声が頭の中でこだましました
本当に馬鹿なことをいってたのです。
と、そのとき先方から電話がきました
「あとどれくらいでつくの?」
「はい、もう3分以内で到着します。」
先方は先方でクライアントを寒い中待たせているわけですから
気が気じゃなかったと思います
心証を害してしまったら大事な商談が吹き飛びかねないのですからね。

最後に待ち受けた関門

車は地上に出ると山手通りを右折しました。
付け場所は山手通り沿い、オフィス棟側ですから、
いったんUターンしなければなりません。
どこで旋回するか
悩む間もなく前方に甲州街道にぶつかる初台の交差点が現れてきました。
よし、ここでUターンだ
これでお客様のもとへ行けると
右車線に車を移動させたその時です。
交差点に白バイが一台止まって
往来する車を監視しているではありませんか!
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ちょとまって
といって、躊躇している余裕はまったくありません。
私は交差点周囲がUターンできるかどうか
標識の有無を確認しようとあちこち視線を投げたのですが
気も急ぐせいか、視界には標識がまったく目に入ってこないのです。
なんだ~
最後までマンガだよ、これは・・・
続く→ マンガみたいな話 3