面白い仕事 「台数口」

「台数口」という言葉があります。

2台以上の配車がある時に使う言葉。

結婚式、葬儀、株主総会などの特別な集会、時には海外の有名ブランド会社が顧客のために感謝会を開催し、終了後の見送りのために、100台以上の台数口もあります。(大口の注文時は一社では対応しきれませんから、都内数社共同で対応します)

こういった台数口の仕事が入ると、だいたいベテランが先頭に立ってリードしていきます。新人は時々この台数口の配車を受けてベテランの後にくっついていきながら仕事を覚えます。

特に結婚式や葬儀の場合は普段の配車と違って、細々とした決め事があり
口頭で指導を受けても勝手がわからないため、新人にとってはよい勉強の機会となります。

ドアサービスも普段は自分の車に乗り込むお客様に対してのみ行いますが、
台数口で仕事をする時は、より意識の範囲を広げる必要があるんですね。

車の誘導をしたり、仲間の車にお客さまが乗り込む際に、自ら出ていってドアサービスをして、仲間の車が早く出庫できるようサポートしてあげたりします。

遠くから先輩たちのやっている仕事ぶりを見ていると、普段営業所でバカ話ばかりしていた先輩たちがうそのようです。実に手際よくてきぱきと動き助け合っている姿がそこにあって、この時ほど私は「ハイヤーサービスの美学」なるものを感じてしまい、思わず魅とれてしまった経験がありました。

車庫を出てしまえば一人で判断し行動しなければならないことがとかく多いハイヤーの仕事です。しかも入社して間もないころは、とにかく地理に暗く、基本動作も固まっていないために、自身がなく不安だらけで周りに眼がいきません。

仕事一つ一つをこなすのに精いっぱいですから、その過程の中でこの台数口に駆り出されたときに、先輩たちの所作を観察することが、どれほど多くの刺激と学びを得る機会だってでしょうか。

台数口の仕事はハイヤー運転手のイベントであり, 実に「面白い仕事」なのです。