「車庫番」と「お友達配車」

車庫番

ハイヤーの仕事もある程度慣れてくるとコツをつかんできます。
人によって違いがありますが、自分のペースができてくれば、待機時間を利用して自分磨きもできるようになります。

さらに、専属の仕事や請負で企業へ出向すると時間配分などが読めてくるので、のびのびと仕事ができるようになるのですが、「車庫番」のままだと、毎日人と動きが変わりますから、心身共にきついものがあります。

「車庫番」とは、すなわち、自分の札を配車デスクにあげ、仕事が回ってくるのを待つというもの。車庫の番をするから「車庫番」と言うようになった業界用語です。

この車庫番は、その日その日の計画が全く立ちません。
何時に出庫するのかも分からず、当然どんなお客様で、どこに向かうのかも出庫30分前から15分前になってはじめて知らせれます。ですから、この車庫番の仕事を続けると心身の疲労は半端じゃないのです。

ところで、この配車に関してはちょっとしたルールが存在するようです。正式に聞いたことがないので、推測の域を越えませんが、基本的に札を上げた順番で仕事を回しているようなのですが、乗務員に対して配車を知らせる時間が決まっていて、乗務員が前もって予定を尋ねても、ある時間(出庫30分前)前では教えてくれないのです。
といっても、これは会社によって違いますけど…

乗務員の給与は、ほとんどの会社の場合、完全固定給ではありません。
基本給+歩合給となっています。

かといって、タクシーのように営業収入を規定の割合で会社と分けるといったものでもないので、計算が複雑になっているところもあるのです。

その歩合給の部分が走行距離や運行時間に関係しているとなりますと、当然ながら仕事の量と質によって給与が上がり下がりすることになりますよね。ですから、乗務員たちは配車の内容に敏感に自然と敏感になってくるわけです。

ところが、特定の人に特別なひいきをしていないのにも関わらず、
仕事内容に偏りが生まれ、それが顕著な形で格差が生れてきますと、
乗務員側から文句が出ることさえあるんです。

このように、配車係は乗務員の食い扶持を左右する重要なポジションにいるため、いい仕事をしようと思ったら、配車係との関係を大切にしなければならないことになるというのは至極当然なことだというのはお分かりかと思います。

お友達配車

大手の場合、仕事量も多く、抱える乗務員も多いことから仕事を断るということは稀なんですが、それでもベテラン乗務員は結構幅を利かせていて、若い人や新人などは彼らの語気の強さに負けてしまい、彼らのわがままを聞いてしまうこともあるのです。

配車係「今日ね、これとこれとこれがあるんだけど、どれ行く?」
乗務員「じゃあ、ホテルオークラまでの送りにしようかな」
配車係「オーケー、8時半出庫、9時会社玄関前先着ね」

こんな会話がなされます。

時折、乗務員の方が
「こんなの出来ねえよ」
「なんだ距離が出ない仕事じゃないか、こういうのは新人にやらせろよ」

配車係も実は見えない戦いを強いられていることを乗務員はあまりよく知りません。
やさしい仕事はできるならば新人にさせたい。難し仕事はベテランにお願いしたい・・誰もが考えることです。

ところが、これが逆になることがあって、しかも、それによってお客様からクレームをもらってしまうことがありますから頭の痛くなる問題だというわけです。

お客様のクレームは、当然担当した乗務員の問題です。

しかし、そうなる前に何か手立てはなかったのか原因を突詰めた時に、そのクレームの質にもよりますが、仮にベテランの乗務員だったら、対応は問題なくいったでしょうに。

ところが、クレームの内容を見た時に、明らかに経験の浅い乗務員であったために起きたミスやクレームであったりすると、じゃあ、そもそもなんでこの新人乗務員をこのお客様につけたのか、ということで、配車係にも責任の追及が及んでくるのです。

人がいない時は、休んでいる人に連絡して出社を促したりして調整をし、それでも処理しきれない場合には他社へ仕事を回すこともあったりする配車係の仕事はなかなか大変です。

ですから、力量ある配車係は気の合う乗務員を数名抱えていて、緊急時は応援を要請し、また逆にいい仕事を他にはわからないように優先的に回したり、情報を事前に知らせたりするわけです。持ちつ持たれつの関係を築きながら、仕事をスムーズに処理していこうという発想ですね。

このように、半ば馴れ合いで配車をすることを皮肉って「お友達配車」と呼び、乗務員たちから陰口をたたかれるのです。

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