マンガみたいな話 1

事実は小説より奇なり

こんな言葉がぴったりな一つの事件を公開しましょう。

ワゴン車(グランドキャビン)での仕事でした。
先着場所は東京オペラシティ‐
初めて行く場所でした。
tokyo operacity.jpg
この初めて行く場所というのは曲者です。
事前に下調べしていくのは当然のこと、
先輩を捕まえて説明を受ける機会を逸してしまうと
自分で調べるといっても
スマホを片手にしてグーグルマップを開き
ストリーとビューでエントランス部分をみたり
周りの情景を確認したりするのが席の山です。

また、
直接その建物のインフォメーションに電話して聞くこともあります。
安心材料をたくさん積み上げておいて現地に向かいたい
これは私の性格的な傾向でもあります。

その時の仕事は、指示書に行先が複数個所あって、
しかもほとんどすべてにおいて行ったことがない場所でした。

こうなると、もう無条件に
カーナビにたよらざるを得なくなります。
準備の時間に結構割かれてしまいますと
出発の場所となる付け場所には
とりあえず、早めに出向き直接確認するしかありません。
この東京オペラシティはまさにそうでした。

依頼者は、海外の不動産会社を招き入れ
東京にあるいくつかのオフィスタワーを紹介する段取りを組んでいました。
ワゴン車を必要とするのですから
当然乗車される人は少なくとも5人は乗車されるでしょう。

しかも
日本側が入念な準備をしていることは
指示書を見れば一目瞭然
また、行先もいろいろなオフィスビルです。
こちらとしても、ぬかりなく準備したいもの

ドラマの始まり

さて、
先着時間に余裕をもって到着した私は
新国立劇場側のエントランスに車を横付けして、
もう一度指示書に目を通しました。

とりあえず担当者に連絡して
付け場所を確認しよう

「もしもし、今新国立劇場側のエントランスにおりますが・・・
お車をどちらに回したらよろしいでしょうか?」
「地下にあるエントランスに来ていただけますか」
先方がそう指示をしてきました。
map operacity.gif
電話をかけた時にいた場所はエントランスではありますが
地下ではありませんから、どこからか入る入口があるはずです。

実は、すでにこのオペラシティを一周ぐるりと回ってみてみて
いったいどこの地下に入ったらよいのか
複数ある入り口を確認しつつも
少々戸惑っておりました。

ふと今いる場所から右手に目を向けると
地下駐車場へ降りるスロープが目に飛び込んできたので
ひとまず下に降りてみようと
ハンドルを右に切り、車を移動させてそのスロープに車の頭を入れたところ
下に見える駐車場の入り口に掲示された数字が目に飛び込んできました。

車高2.1mまで

何だ?
このグランドキャビンは車高2.3mです。
grandcabin.jpg
わずかに20センチ足りません。
ここはオペラシティだぞ!

こんな立派な建物を構えておきながら
グランドキャビンが入らないというのか・・・

少々呆れてしまいました。
しかし
そろそろ先着時間が迫ってきます。
もう車はスロープ中腹まで降りていましたから
車を後退させるしか出る方法はありません。

後続車が来る前に早いところバックして外に出よう・・
ギアを「R」にいれ、サイドミラーとバックモニターで後方確認をしようとしたら
ミラーに車が映りました。

なんだ、よりによって車が入ってきた;・・
私は車を降りて後続車に

「大変申し訳ありませんが
この車、車高の問題で入庫できないので、バックしますから
下がっていただけないでしょうか?」

明らかにこちらのミスですから
ここはもう恐縮した態度を表して、穏便に後続車にバックしてもらうしかありません

さらにそのあとから車が続いて入ってこないように
ここは迅速に対応してほしいもの

信じられないことが・・・

後続の車はトラックでした。
ところが、ここで変な「間」が空いたのです。
トラックはいっこうに動こうとしません。

あれ?

私の説明が良く聞こえなかったのか・・・
トラックの運ちゃんは結構質(たち)が悪いともいいます。
私のミスに腹を立てているのか・・・
あれこれと頭の中に考えが渦巻きましたが
時間がだんだんと経過します。
再度お願いしてみました。

すると
そのトラックの運転手はおもむろに
「バックができない・・・」
ぼそっと漏らすようにいうのです。

えっ?

私は自分の耳を一瞬疑いました。

バックができないって・・・
だって・・
そんな急な傾斜ではないのに・・

どうなってるんだ???
じゃあ、どうするの?
この車だって入庫できないのに、

その運転手はバックできない理由を次のように説明してきました。
積んでいる荷が重すぎて
バックギアを入れて後退しようにも車が坂をあがらない・・・

ええ~

私はすぐさまそのトラックの荷台に目をやりました。
シートがかけられていて、一見過積載しているなんて見当もつかない状況でしたから
荷物を少し下ろしてでも、とにかくバックしてもらわんことには
どうしようもない・・・・

なんとかなりませんか・・

私の声に焦りが出てきました。

かなり重いので、いちいち下ろすわけには・・・

私は完全に凍りつきました。
この状況で、それはないでしょ!
でも、運ちゃんほ私の気持ちなど関係ないといったように、呑気な態度でいます。

大声を張り上げて叫びたい気持ちを抑えながら
じぁ、後退がダメなら
駐車場内になんとか入る手立てはあるのか
たかだか20センチです。
少々の余裕はきっとあるはず・・・・

前方駐車場入口は、左にゆるくカーブしていて、右側に若干のスペースがあるのがわかりました。
いったん自分の車をそこに避難させて後続車を駐車場内にいれたあと
自分がバックすれば・・・

入口の上に部分には
長さ1.5mほどの鉄の棒が両端に鎖でつながれて天井から吊してありました。
垂れた鎖は50センチはありましたから、押し上げれば結構余裕でくぐれます。

よし、いってみよう!

車をゆっくりと進め
そのバーを押し上げながらすり抜ける作戦でいくしかない・・・

バーが車の天井にさわりました。
いったん車から降りてみてみると
高速道路の料金所のバーと違い
鉄製でしかも重量があるため、
もし、強行突破しようものなら
明らかに車の天井が傷ついてしまうことがわかりました。

ダメだ・・・
どうしよう
どうすればいいんだ…
落ち着け、  落ち着け・・・落ち着くんだ・・・

時計に目をやります。
先着時間は5分後に迫ってきました。

どう対処したらよいか・・・

とにかく
まずは、お客様に連絡し、
それから営業所に連絡だ・・・

携帯電話を握る手が震えました

もしもし・・・

(続く)→ マンガみたいな話 2