新人ハイヤーマンにとって、最も緊張するのは、
目的地にお客様をお連れするにおいて
いったいどこでお客様を降ろせばいいのかを確定することです。
タクシーはその点、行き先さえしっかりとすれば、
なるべく最短のコースを通って料金を安くし、
送り届けさえすればそれでしよしとされます。
しかし、ハイヤーの場合は、
お客様が車を降りて建物の入り口に入るその動線までも考慮に入れた
「付け場所」を選定することも
サービスの一環として重要になり、
特別要求はされませんが
当然配慮すべきポイントになっています。
ところが、
出庫前にいちいち現地確認することができないので、
デスクからのアドバイスを受ける場合がありますが、
忙しい時間はそんな暇はありません。
そこで、先輩をつかまえて、経路や付け場所、
車寄せなどの状況を聞き出すのですが、
あまり行かないところとなりますと、
知っている人がその場に居合わせないので,
宅地図が情報源となります。
5年くらい前なら、とにかく行くしかない、
あとは野となれ山となれと、
最後はなかば開き直るしかありませんでした。
ところが、昨今スマホの普及とそれに伴い、
アプリの機能向上で,
東京都内ならば、グーグルが提供するストリートビューを活用すると、
画像で目的とする場所や建物を確認することができるようになりました。
衛星写真を見れば、道路の車線、時には標識まで認識できるので、
これは車の仕事をしているものにとって実に重宝する、
なくてはならないツールになりました。
本当に便利で、機能の素晴らしさに感動することもしばしばです。
さて、営業所内に眼を転じてみましょう。
ベテラン乗務員は、まず、このスマホを所持しておりません。
いわゆるガラケー(折り畳み式の携帯)を後生大事にしています。
だからといって仕事には困ることはない様子です。
それもそうでしょう。
過去にたくさんの経験を積んでいるために、
今更スマホで確認する必要がないからです。
ところが、ここ1年、入ってきた新人さんは違います。
業界未経験で、しかも道に明るくないとくれば、
スマホ、タブレットを持参して事前に情報収集し、
とにかく正確に仕事をこなす努力、工夫をしています。
地図表示も、そしてナビゲーションも、また高速道路状況も、
今やスマホなくしては仕事ができなくなりつつあります。
グーグルの提供するアプリは無料で提供されているので、
ほとんどのドライバーが使用していますが、
中には数千円自己投資して、ナビゲーションアプリを導入する人もいます。
実はこの背景には、お客様も情報に進化してきているという事情があります。
乗り込むなり、リアルタイムで交通情報などをスマホを見ながら入手し、
運転手に直接指示する方も出てきました。
ですから、プロドライバーとして、事前に状況を調べ、
お客さまとのちょっとした情報戦が車内で繰り広げられます。
乗り込まれるなり
「この時間、湾岸どうかな?」
「はい。湾岸は東京港トンネルのところで3キロほど渋滞していますから,
横羽線を使っていった方がよろしいかと思います。」
「おお、そうか、じゃあ、そうして。」
事前に調べがついていれば、自信をもってエスコートでき、
御客様も安心して自分の用を足すことができます。
ハイヤーをよく利用される方は
乗り込んできたときに、運転手の対応から即座に、任せられるか、
そうでないかを判断し、それに応じて指示を出すこともあるのです。
会社の舵とりをしている人は、人を瞬時に把握する能力に長けていますから
そのような方が乗車されると、
挨拶から経路確認までのわずか1分程度の対応の中で、
いかにお客様の信頼を勝ち取るかの勝負となるわけです。
その一役を担ってくれているのが、今や情報端末「スマホ」なのです。
今後さらにカーナビの進化や、VICS(注1)機能の性能向上により
高速道路に限らず一般道さえも混雑を回避しながら目的地に行くことがより可能となるでしょう。
したがって、
ドライバーはそのような情報機器を駆使して情報を入手し正確な判断をする、
いわゆる情報処理能力が問われてくるでしょう。
ハイヤーマンにとっては、
神様、仏様、スマホさまです。
注1「VICS」(通称ビックス)とは – Vehicle Information and Communication System の略。 カーナビ上で高速道路・主要幹線道路の混雑・渋滞等の情報を提供する機能