「もしもし、今、大手町ビルの前に来ております。。
どちら側の出口にお付けすればよいでしょうか?」
「えっ、なんだって、大手町ビル?」
「はい」
「おいおい、ちょっとまってよ
今まだ会社だよ。大手町ビルは今日いくところ
7時に会社の方に車を回すよう頼んだんだけど・・・」
携帯を片手に、指示書にすかさず目をやりましたが
間違いはなく、大手町ビル7時先着となっていました。
デスクの配車ミスか?
それとも、御客様の勘違いか・・・
しかし、そんなことを悠長に考えているひまはありません。
さて、
こんな時、みなさんならお客様にどの様に対応しますか?
誰のミスか?
瞬間の判断、対応が要求される時ですよね。
御客様の勘違いだというのは絶対にありえないこと、
いや、仮にそうだったにしてもです。
良くご利用されるお客様でしたから、
デスクの配車ミスであることは明らかでした。
しかし、御客様にはどう伝えるべきなのか・・・・
とっさに出た言葉は
「すぐに車を会社へ回します。」
「いや、それでは約束時間に間に合わんよ」
「では少しお持ちください、
こちらですぐに車を手配致します。」
即座に営業所に電話をいれました
「もしもし、乗務員●●です
7時に大手町ビル先着の木村様なんですが、
大手町ビルではなくて、会社に7時先着だったんだそうです。」
「指示書には大手町ビルとなっていたんだね。、
それで、御客様は?」
「すぐに会社に向かうことを告げましたら
約束時間に間に合わないとおっしゃるので
こちらから早急に車の手配をすると申し上げて一旦電話を切りました。」
「そうですか、わかりました。
じゃあ、他の車を手配するので、こちらから
木村様に連絡しますから、営業所に戻ってきて」
「私からは連絡しなくてもよろしいですか?」
「こちらから連絡した方が二度手間にならないからね」
「はい、わかりました」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
営業所に戻ると、このいきさつを聞いていた同僚が
「おい、大丈夫だったか」と声をかけてきました。
「ありゃ デスクのミスだよ。
でもね、
お客様には配車係がミスったといって言い訳できないだろう・・・」
なるほど
「私が悪うございましたと、まず謝るしかないんだよなあ・・・」
隣にいたベテラン乗務員が独り言のように言いました。
えっ?
私はさっきのお客様とのやり取りの記憶をたどりました。
そうか・・・
私は電話口で、お客様に申し訳ないの一言が言えなかったのです。
それは、今回のミスの原因が明らかに私になかったと思っていたからでした。
しかし、
先輩乗務員は、まず先方に謝るべきだというのです。
私の代わりに現地に向かった乗務員も
きっと到着するなり、自分の過失じゃなくても、
そのお客様に対し、会社を代表して陳謝したに違いありません。
責任の所在はデスクにあれど、
現場の人間が頭を下げる・・・・
なかなか厳しい局面でした。
代わりに向かった乗務員さんが戻ってくるなり
「いや~、まいった、御客さん結構怒ってたね。
まあ、なんとか約束時間には間に合ったので
一大事にならなかったけどさ。」
と、ぼやきました。
「そうでしたか。」
「まあ、こっちのせいじゃないでしょ、これは・・
人間だからミスはあるけどさ・・・まったく辞めてほしいよな、」
こういう場合は
部長クラスの人間が後で頭を下げに先方にいくそうです。
さて、
現役ハイヤー乗務員さん!
あなたなら、こんな時どうします?