ハイヤー運転手も「自分ならできる」という仕事をやっている

地方の企業工場訪問で

地方にある大手企業の工場にお客様をご案内した時のこと。
午前中に現地に到着、その後3時間ほど待機することになりました。

小山を切り開いて開発した工場の敷地のせいか
周辺に民家が見当たりません。
だからでしょうが、近くにコンビにが1件もない実に辺鄙な場所でした。

待機を初めて1時間位経ったころ、トイレに行きたくなったのですが、
どの施設もIDカードがないと中に入れないらしく
周囲をざっと見渡してみても、それらしき建物が見当たらない。
そこで、しかたなく正門の守衛室に歩み寄り、中にいる警備員に尋ねました。

すみません。
トイレを借りたいのですが、どちらにありますか…

私の問いかけが意外だったのか、警備員はちょっとためらう表情を見せたあと
「では裏にあるトイレを使用してください」
と守衛室の中にあるトイレに案内してくれました。

用を足して改めてお礼の挨拶をしたところ
この警備員はおもむろに
「どちらの会社から来られましたか」と尋ねてきました。

最初とは違って、
にこりと笑みを浮かべたその表情は、
人懐っこく、話好きそうな雰囲気を醸し出していました。

一応簡単に紹介したのですが
今度は話を車の仕事に関する話題に切り替えて、いろいろと質問をしてきました。

人里離れた場所に
ひょんなことから部外者が現れたので、
きっと彼の好奇心が大きく膨らんだのでしょう。

朝迎えは大変か
癖のある人はいないのか、
忙しいのか、体はキツくないか
役員さんの付き合いは大変じゃないか
などなど、

結構突っ込んで色々と聞いてくる。
しまいには、この人、転職を本気で考えているのか?
そう思えてきて、こちらもとうとう我慢できなくなり

「ドライバーの仕事に関心があるんですか?
もしかして転職を考えてるとか・・・」

ところが、私の質問の言葉をすぐさま遮って

「とんでもない
とてもとてもそんな会社のお偉いさんを後ろに乗せて走るだなんて
自分には気が小さくてできないですよ。」

そんな答えが返ってきました。

なんだ、ただの興味本位で聞いてきただけなのか
真に受けた自分がバカだったな・・・

なんとなく無駄に時間を使ってしまった・・
しっくりとしない気持ちを引きずって車に戻ると

気が小さくてできない・・・か

先程の警備員と交わした会話がにわかに脳裏に蘇ってきました

自分だって気が小さい方です。
それでもなんとかこうして仕事をやってのけているのにな、、、

ハイヤー運転手はレベルが高い?

そう言えば
転職してすぐに新人研修に入ったときも同じような場面がありました。

タクシー研修を受けるために会社の研修センターに初めて訪れた際に
そこにいたタクシー乗務員志望者の中で
我々新人ハイヤー乗務員を羨望のまなざしでみていた人が数人いたのです。

彼らの一人は、
ハイヤー乗務員として採用された人はレベルが高い
といった話ををしていたので、私は思わず話の中に割り込んで言いました。

レベルが高いだなんて、自分は業界未経験だし、
たまたまハイヤーの方を応募して採用されただけであって、
みなさんとなんら変わらないんですよ。

実際、会社の求人広告には常に
ハイヤーもタクシーも共に募集要項が掲載されています。

どちらにするか選択の際に
仕事の中身を精査して決めるというならまだしも
応募資格を持ちながら、
自分はハイヤードライバーになるレベルじゃないと決めつけて
応募自体を諦めたのなら、それはちょっと残念な話です。

そんなに自分を卑下してどうするんですか、
本当なら、その場でそういってあげたかった

でも、あの時は
ポカンと私を見つめる彼らの顔を見て思いとどまりました。

「できる」という仕事をやっている

私は40代半ばでこのハイタク業界に足を踏み入れた
いわゆる典型的な転職組。
同期入社のメンツをみても似たような境遇をもつ人が多かった。

そして皆に共通していたのは、
まさか自分がハンドルを握る仕事をするなど想像だにしなかった
ということです。

そんな希望もしない仕事をどうしてやろうと思ったか
気になりますよね。

それは、それぞれが一様に背負っているものがあったからです。

私の場合は「家族」でした。
独り身だったら
間違ってもこの業界には足を踏み入れることはなかったと思います。


業界を知らない人からすると、
ハイヤー運転手は先の警備員のように、
お偉いさんを黒塗り高級車に乗せて走るから
責任が重く、大変そうに見えるため
だから自分にはできない・・そう思う人がほとんどのようです。

当時の私はこの仕事に対して、会社が求める資格や
待遇面のほうに関心をもっていたためか、
仕事自体が難しそうだという印象を抱いていなかったように思います。

それよりも逆に、
車の運転といったって、
年に数回乗るだけのほぼペーパードライバーだし
東京の地理もほとんどわからない
そんな自分に内定を出す会社って、どうなっているのかと思えたほど。

今なら無謀とも思える選択をし行動を起こせたのは
「家族を養う」という、所帯を持つ男たちが持つ責任意識があったからに他ありません。

10年という歳月が「できる仕事」に変えていた

家族を路頭に迷わすまいと、
自分を忘れて無我夢中でハンドルを握って業務をこなし
気が付いたらもう10年の歳月を流している。

結局多くの人達が口をそろえて言うように
私も「家族の存在」によって支えられ
一つ「自分にもできる」という仕事をもつようになっていました。

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