新年の恒例儀式 銀行挨拶まわり

銀行挨拶まわり 

「まったく毎度この行事って本当に無駄なんだよな」

仕事始めの4日
金融機関へ年始の挨拶のために乗り込んだ企業役員さんから
年始早々ぼやきを聞かされました。

(※2021年から23年の年始はコロナの影響で挨拶まわりは取りやめになりました)

丸の内にある金融機関を目指して皇居を左手にして日比谷通りを走り、大手町の交差点を右折して永代通りに入るや

目に飛び込んできた光景は、道端にずらりと路駐をする黒塗りの車の行列。

白ナンバーの役員車に混じって営業車もかなりの数が集結していました。

今年も例年通り、年始の挨拶周りに多くのハイヤーマンたちが駆り出されているようです。
この光景を目にすると、新しい一年が始まったなという実感が湧いてきます。

しかし、後部座席に陣取るお客様の気持ちは、年始早々からまるで儀式のように行う銀行の挨拶周りにいささか辟易しているようでした。

だからといって、何かこちらから労をねぎらう言葉を投げかけるわけにはいきません。
とにかく我々の仕事は、降車しやすい場所を素早く見つけることが先決です。

最悪、横付けするスペースが確保できない場合は、縦列駐車した車と車の間にできたスペースに後部座席のドアを合わせて車を止めて、とりあえず、お客様に安全に降車していただけるように気を配ることしかありません。

お客様が降車後は、出発時に渡された分刻みに計画された挨拶回りのスケジュール表を取り出して、次の行き先を再度確認します。
普段であれば、銀行間の移動に5分もかからないところを、3倍の15分かけて移動し、車を横付けできないときは二重駐車(これは完全な違反)も平気でやってのけるのです。

この日は警察も目をつぶって黙認状態となるほどの大混雑。

メガバンク三行

近年、金融機関の統廃合が進み、メガバンクと言われるようになった三行(三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行)と取引をしない企業は皆無といってよいので、年始に訪問する銀行のルートが似てくるせいか、丸の内界隈の混雑は年々激しくなっているように感じます。

ちなみに日本取引所のHPをみると、2024年1月4日現在 上場している企業は合計で3932社でした。
このうちのほぼ7、8割が東京に本社、あるいは支社があるはずですから、この数に匹敵する社用車、ハイヤー車が丸の内を埋め尽くすことになります。

     

金の力を最大限行使する銀行

企業にとっては、銀行との付き合いは切っても切れません。
設備投資や、運転資金調達に際して銀行の力を借りるわけですから、年始の挨拶の優先順位のトップに主要取引銀行を置くのは当然のこと。

特に従業員5千人以上の大企業ともなると大きな金額を動かしていくことになるので、常日頃から会合や相談で、役員や、あるいは経理担当者たちが銀行関係者と顔を合わせているわけです。

さらに、業績が良い企業ともなると、銀行が投資先にその企業の株を購入して運用したりして、より密接な関係を築いていることがわかります。
銀行としても投資先企業の今後の展望を伺う腹があって、年末になれば銀行側からも企業トップを招待して会食を共にしたりするので、年始の賀詞交歓会は必須の行事となるわけです。だから冒頭の役員さんのようなぼやきが出てしまうのも無理ないことかもしれません。

取引企業の業績が良い時は投資対象となり、経営状況が厳しくなると、貸し渋り、貸し剥がしなどで、じりじりと追い詰めていく・・・。

いずれにせよ、金の力というのは本当に大きいことを見せつけられますね。この伝家の宝刀を思う存分に行使する「銀行」に対する企業人の感情は複雑なようで、主要三行をめぐり、一通りの挨拶を終えた役員さんは降車間際に

「こっちが汗水流して働いて作った金を、銀行は右から左に動かして食ってるんだからな・・・」とまた、一言。

我々の苦労も知らずに、良いとこ取りしてる。いい気なもんだ・・・とでも言いたそうな口ぶりでした。年初めから企業経営陣の言うに言えない胸の内を垣間見たような気持になりました。

ハイヤーマンのため息

ところで、この挨拶回りに同行したハイヤーマンたちの中には、お客様のそんな事情をよそにして、営業所に戻ってため息をもらし愚痴るものがいるんです。

一日かけてわずか10キロ程度しか走らない・・・

拘束時間と走行距離で実入りが評価されるため、年始は金にならない仕事をする我らハイヤーマンのお勤め儀式の日でもあるんですね。

でも、この銀行回りがあるから、新しく年が変わったことを実感するので、まんざらでもないと私は思っています。

 

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