元役員運転手派遣会社職員⇒現在タクシー運転手


タクシー運転手との立ち話

お疲れ様です!
「迎車」の表示を出し、外に出てお客様が出て来るのを待つタクシー運転手に私は声をかけました。

この日、指定された場所に車をつけると、車の依頼主は会食場所に私のハイヤー車と同行させるタクシーを呼んでいたのでした。

「行き先は日本橋室町なので、昭和通りを使って江戸川橋北の交差点を左折していきますね。」

私の後ろについてきてもらうため簡単な打ち合わせをしたあと

「もうタクシーの運転は長いんですか?」
と、おもむろに質問を投げてみたら
「いや、まだ3年ですよ」
と、親しみやすい感じで答えてきたので、私はさらに調子に乗って尋ねました
「営収の方はどうですか?」
「まあ、気楽に流しながらやってます。」

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タクシーよりきつい仕事

見た感じ40代半ば
顔の表情からみて、ストレスなくのびのびとやっていることがうかがい知れます。
「隔日勤務なんでしょう、体きつくないですか?」
「最初の3か月は大変でしたが、時間配分と力の入れどころがわかってから、かなり楽になって、今では休みの時間を有効活用できるようになりましたよ。前の仕事よりはるかに楽です。」
「そんなにきつい仕事だったんですか?」

私は、ハイヤー会社に転職した時、研修期間に約2か月ほどタクシーに乗った経験があります。

当時業界未経験の立場で、しかも東京の地理もわからずとにかく御客様が乗車されると、
「恐れ入ります。 新人です。道のご案内お願いします!」
と挨拶していたんです。

特に「道のご案内」を乗客に請うという挨拶は口に出すことに葛藤して、慣れるまでとても苦労しました。

お客様から、
お金を払って乗車するんだぞ、
  なのに道まで教えなきゃならないのか・・
そう突っ込まれはしないかとびくびくしてました。

ほとんど丸一日、車に乗ると、仕事を終えて家に帰ってもエンジンの振動が体に残って、夢でもタクシーに乗っている自分が登場する・・・。精神的にも肉体的にもタクシー仕事は結構きつかったという記憶しかありません。

それなのに、この人、タクシーが前職より楽だなんて・・・
「どういう仕事だったんですか?」
素朴な好奇心からさらに突っ込んで聞いてみました。

すると、彼はざっくばらんに自分のことを話し出しました。

役員運転手派遣会社では最大手という 「大新東」で事務方として勤務していたそうですが、全国規模で運転手派遣を行っているため運転手派遣の打ち合わせのみならず、特に事故処理、クレームなどで全国あちこちに飛び回っていたらしく、かなりハードな仕事を強いられていたというのです。

彼はそういうあまりにも自分の時間がとれない職場環境を嫌ってタクシーに転職したと言っていました。

ダブルワークで月40万~50万の稼ぎ

「これ●●交通の看板ですけど、赤い帯がないのでグループ会社なんでしょう?」
乗っていたのは新型プリウス

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「いえ、完全に上が買いとったんです。」
「じゃあ、営収に対する追及がありませんか?」
「それが結構ゆるくてね。そこそこの営収を挙げていれば文句はいわれませんよ。」

彼の話からすると月収25万程度らしい。
となると一日平均営収が4万から5万の間なんでしょうね。

実は驚くことに彼はタクシーをやりながらもう一つIT関連の仕事を手掛けているというのです。
いわゆるダブルワーカーです。

「タクシーの仕事は時間をうまく活用できていいんですよ」
「でも隔日勤務じゃ、明けの休みは眠いでしょうに」
「いやいや、そこはうまく時間調整してやってます。
もう一つの仕事と合わせると大体40~50万くらいになるかなあ。」

……へえ、結構稼いでるんだな・・・

ハイヤー運転手で50万稼ごうと思ったら残業は必至。そのために帰宅時間が遅くなると同時に、終電に間に合わないことや、早出の要請を受けるため、会社に週3日くらい宿泊することもざら。

会社の指定した休みも返上し、週一回休むくらいのぺースでやらないと難しい。ですから、面接時に家族の理解はとれているかのかを聞かれます。

まあ、IT関連の仕事といってもいろいろあるでしょうけど、もしもパソコン1台あれば仕事ができるといったスキルをもっていれば自宅で作業時間さえ確保できれば収入をアップさせられる・・・。

なかなかやりますね。
ダブルワークか・・・
これからこういう人が多くなってくるでしょうね。

役員運転手事務方の苦労

さて、ここで依頼主の会社から出発までもうしばらく待ってほしいという連絡が来たので私は彼の前職についてさらに質問をして見ました。

「役員運転手ってやっぱり研修期間があって、その間は契約社員のような扱いなんでしょうか?」
「いいえ、採用された人はすぐに正社員になってますよ。30代、40代は使えるんですが、50代以上となると結構問題も多くてね。」

役員運転手の場合、営業車を使用しませんから白のまま、すなわち二種免許がいらないわけです。

しかし、その分きちんとした研修が必要になるのですが・・

問題というのは、特に車の事故のこと。
実車中の事故だけでなく、自損事故もある。
道がわからない。御客様との相性があわない。

ある運転手は、あまりに役員が酒癖が悪いので、やってられないといって辞めてしまった例もあるといいます。
「そうですよね。 酒癖が悪いとこまりますよ。」
私も相槌を打ちながら、タクシー研修時に酔客でひと苦労したことを思い出していました。

当時タクシー研修では、お客様には絶対に触れてはならない。なんていわれていたもので、ただただ大声を出すだけ・・・

その点ハイヤーのお客様は、そこまで酔いつぶれてしまう人を私は今まで見たことがありません。

ただ、これが役員車となると、毎日同じ御客様をお乗せするために安心感から本音や本性が出てしまうのでしょうか。

「そういう運転手の尻ぬぐいが、ほとほといやになったんです。」と、忌まわしい過去をもう思い出したくもないといった表情を見せました。

ハイヤーがいいのか タクシーがいいのか

私は車の運転仕事の中で、役員付き運転手ほど気楽にできる仕事はないだろうと見ているのですが、その仕事を陰で支えている事務方に立つと、逆に気苦労の多い仕事が多いことがわかりました。

彼に言わせれば、ハイヤー運転手であれ、役員付運転手であれ、時間を拘束される、自由がない、自分で時間を調節できないというわけで、タクシーはその点をクリアしているからいいですよ。と、自分の選択は間違っていなかったと誇らしげな口調でいいます。

でも、
仕事の良し悪しは一つの価値観と同じで、その人の性格や立ち位置によって感じ方、捉え方が千差万別ですから、仕事の内容からファイナンスまで自分で組み立てて実践することが得意な人はタクシーの方がいいし、高級車に乗って見栄えよく、ちょっとステイタスにこだわりがあり、お金を直接いじったり、考えなくてもできる仕事がよいという人はハイヤーに向いている人だと思います。

この日あった運転手は明らかにもう一つの仕事のスキルを活用したかったからこそタクシーという選択をしたのでしょうね。

kappo.jpg

と、その時です。
ビルの正面玄関から御客様が出てこられ、話はそこでおしまい。

会食場所に到着し、お客様が降車したあと後続のタクシーに挨拶をしようと後ろを振り返ると、彼は料金の支払いでお客様に対応していました。狭い一方通行の道であり、その場に長くとどまる理由がなかった私の方はしかたなくそのままその場を立ち去ざるを得ませんでした。

せめて出発前に連絡先でも聞いておけば良かったなあ。せっかくいろいろと話ができたのに・・・

なんとなく後味悪い別れでした。

 

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元役員運転手派遣会社職員⇒現在タクシー運転手」への2件のフィードバック

  1. 東京ハイヤーマン

    ミルミルさん、そうなんですよ。弁当を持参するわけにはいかず、昼と夜を買い食いすることも多いんですね。
    コンビニ弁当はすぐに飽きがきますから、ちょっとオフィス街で昼食をとろうものなら、7~800円があたりまえでしょう。
    暑いと水分補給も必要になり、なんだかんだ一日1000円は軽く飛んでしまいます。
    ゴルフ仕事の場合、カレーライスが1500円なんてところが普通。
    ですから、ゴルフの場合、会社によっては食事の補助が出るんですけど、驚きの世界です。
    我々は庶民相手に仕事をしてるんじゃないということを実感します。

  2. ミルミル

    いつも楽しく拝見させて頂いてます!
    先日より、乗務させて頂いてます

    先輩達に色々と教えて頂いてますが…
    勤務時間のせいか出勤してから帰るまで、結構費用の係る(主に食事)仕事…と言う印象です!
    前職が社員食堂があったせいかも知れませんが…(1日500円もあれば食事、飲み物、通勤)

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