走れ!東京ハイヤーマン 

国家を意識する仕事 その3

国の威信をかけた運転?…

予定は未定

首脳クラスの車両は、ほぼ予定通り事前に計画したスケジュールにそって運行される確率が高いのですが、いっしょに来日した周辺の人たち、たとえば首相夫人や子息たちとなると、突発的イレギュラーな予定変更に見舞われることがあります。

したがって、そういった車両の担当になった場合は、自分が誰の指示で動く車両なのかを確認しておかないと、移動先で直接乗車した人からの指示が出て、あたふたと動くような場面になるケースがあるから要注意です。議事堂.JPG
ですから、結構瞬発力がいります。

数台車列を組んで移動することもありますが、自分は先頭ではないからと安心しきっていると、走行中信号で引っかかったり、割り込まれたりされ、遅れをとった場合、目的地に到着できなくなります。

不測の事態に備え、早めに行先を把握して気持ちを整えておきべきですね。

また、臨機応変さ、俊敏な対応が突発的に要請されることもありますから、気を抜かないでください。

国の威信をかけた運転?

先日来られた国賓の歓迎時も、いくつかのイレギュラーがありました。
滞在中は、だいたい同じ人が乗車されるようになるのが一般的です。先方だって、右も左ももわからない異国の地で、移動先が変わるたびに車両が変わっていては気持ちが落ち着かないものです。

ところが、その時の私の車両はVIP用ではなく、周辺のお付きの人用だったため、乗車される人がコロコロと変わりました。

空車のまま、車列にくっついていくこともあったりして、さすがにこの時は出発してよいものか戸惑ってしまいました。

相手国の警護の連中が乗り込んできた時には、車列外で動いていたのにも関わらず、前を走る車から離れないでくれと、けしかけられて、何度信号無視をしたことか。

SPがあとでやってきて、車列外の車の場合は、交通法規を守りつつ、少し距離を置いて走ってくれ、もし事故がおこっても責任が持てないからと、たしなめられました。

そうはいっても、こっちも国の威信をかけた運転です。
実際乗り込んできた人が横で激しく、GO! GO! GO!
と声を張り上げられたら、こっちだって大和魂にスイッチをいれるしかないでしょ?
私のミスは日本のミス そんな評価、レッテルを外国人から貼られては癪じゃないですか。

あなたならどうします?
毅然とした姿勢で、あくまで交通法規を守り抜きますか?
判断が本当に難しいところですよね。


予備車両として

また、自分が予備車両として割り当てられる場合もあります。
イレギュラーに備えようという政府側の意向からだと思うのですが、国賓クラスに対してはセキュリティーの問題があるため、あまり細かな動きを運転手に知らせることがありません。

車両を統括する担当者はだいたい一人ですから、たとえ駐車場内にいてもなかなか頻繁に連絡ができないものです。

不安になったら、とにかくこちらから出向いて情報を取りに行く姿勢がどうしても必要になります。

特に初日当日は、自分の車両がどう動くのかを把握するのに時間を要します。そして、一日終わってみたら一度も動かずにホテルの駐車場でひたすら待機させられる、いわゆる予備車両としての役割を担当することもあるのです。

ひどい時になると、地下駐車場に入れられ、携帯もつながりにくくなる、アイドリングもダメ、今の時期ですと、寒さも身にこたえるじゃないですか。それでいて10時間以上待機し、挙句の果てには担当窓口からも忘れ去れる・・・
何かおかしいなあ、と電話を入れてみたら
あれ、まだいたのか・・というような口ぶりで
「確認して折り返し連絡します」と言われて待つこと1時間、
ようやく電話がかかってきたら
「すいません。リリースがかかりました。どうもお疲れ様でした。」
だって・・

いや~  こういう場合は国もへったくれもなくなります。
とにかく待ちくたびれる・・というやつで、
いち早く営業所に戻って、休憩所で足を延ばしたい、
そんな思いが心を占領してしまいます。

細かなことは誰も教えてくれない

ちなみに、
慣れたベテラン運転手になりますと、小まめに、そして積極的に状況把握をして、同僚がいれば横横で連絡をとりながら、早い段階で全体の中の自分の車両の役割をつかんでいきます。

そして、ある程度動きの予測が立ったら、気持ちに余裕が生まれますから、上手に待機時間の活用ができるというのです。
こういった仕事のやり方は誰も教えてくれません。

結局、経験を積んでいくなかで要領をつかんでいくしかないのですが、同じ会社で数台動員された場合は、一人ぐらい経験者がいるものです。対応の仕方を事前によく聞いておくとよいでしょう。

モバイルバージョンを終了