日交さんとの立ち話

時折、会食先で待機していると、白ナンバーの役員車とかち合って、その車の運転手に声をかけてみることがあります。

だいたい話のとっかかりは、乗車している「おやじさん」に関することなんですが、
話が盛り上がれば、互いの自分の所属する会社に関する情報を交換したりします。

そんな交流をしたことを忘れた頃
なんとなく見覚えのある車のナンバーだなあと思っていたら、車から降りてきた運転手をみて、
やっぱりあの時の人だ・・・と顔見知り。

向こうもこちらに気づくと
ぺこりと挨拶しながら
「先日はどうも・・・」
なんてやるんですね

おもしろいことに
相手のおやじさんの名前や会社を知っていても
お互い自分の名前を明かさないので、
「○○会社の運転手」
でしかない、実に不思議な関係となります。

だいたい相手の名前というのは、初めて会った時に聞きそびれてしまうと、ずるずるとわからずじまいでいってしまうものですね。

銀座で会った日交さん

この間、銀座で出会った運転手さんは
日本交通から出向しているというので
これ見よがしに色々と聞いてみました。

私が
「社長が新入社員の車に乗って試験をすると
聞いてるんだけど、まだやってるのですか?」

と聞いてみました。

「いや、それはもうやらなくなりましたよ。」

「それと、ちらっと耳にした話ですが
ハイヤー車両にデジタコ(デジタルタコグラフ)を
搭載するんですってね 」

私は以前小耳にはさんだ情報の裏を取りにかかりました。
「そうなんです。しかもデジタコだけでなく
ドライブレコーダーもつけるんですよ。
それに、もう少ししたらタブレット端末も全車に入れるんだとか・・」

「へえ、それは凄い投資ですね」

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日本交通といえば東京大手四社の一つ
1928年創業ですから、今年で87年目
業界を知らない人でも、都内でサクラにNのマークを見たことがない人はいないでしょう。

業界のリーディングカンパニーという自負心が強く
現在3代目社長 川鍋一朗氏がコンサルティング会社で有名なマンキンゼーで培ってきた視点や、異業種との情報交流を通して時代の流れをいち早く読み取り、新しいことに積極的にチャレンジしている会社であることを知っています。

奥さんは元内閣総理大臣中曽根康弘氏のお孫さんなので、
政界にもパイプがある年齢44歳のプリンス。

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07年、社長就任してまもなく自らタクシーに1か月乗りこんで周囲を驚かし、その体験を本にして出したり

タクシー王子、東京を往く。―日本交通・三代目若社長「新人ドライバー日誌」

先駆けて自社タクシー配車のスマホアプリを開発し、
さらにそれを全国版にしたり

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AKBの歌に乗って先頭きって踊りを見せてPRをしたりと、
話題に事欠きません。

時折テレビにも出演し、マスコミからも注目されていますし
今や東京ハイヤー・タクシー協会会長として、自社のみならず、
ハイタク業界全体の発展を考える立場にいます。

日交ハイヤー 正社員になるまでの厳しい道のり

日本交通のハイヤーは、5年前から社内の改革をはじめ
ハイヤー研修センターを設置し
新人に対しては、研修期間三か月のなかで、地理や接客技術を学び、
さらに社内の英会話試験、秘書検定3級は必修、
そして部長試験、最後に社長自ら乗車して接客対応をみる
「社長試験」に合格し、晴れて正社員として雇用契約を結ぶというのです。

この最終試験である「社長試験」が現在「部長」に取って変わったそうなんですが
それにしても、このような採用後の研修過程を聞くだけでも
こりゃ大変だ…
と、後ずさりしそうな感じを受けてしまいます。

しかし、一流の人をお乗せするハイヤーなんだし、
そもそも各会社の財産ともいうべき役員クラスの人たちをお乗せし
安全を確保しながら、より快適な空間を創出しながら目的地へ
エスコートする仕事を任されている以上
その乗務員たるもの二流であってはならない。
同じように一流の人にならなければ・・・
業界の牽引的立場を維持し続ける会社であろうとするならば
こういった責任感やプライド、そして厳しさがあるというのは当然でしょうね。

従って、いわゆる「川鍋色」に染まらない人は
当然外に出されてしまう。
社内改革前から在籍しているベテラン乗務員の中には、
社長の前で自分の意見を言ったらおしまいだ。
「イエスマン」でなければ、干されるぞ・・
といって皮肉る声もあるようです・・。

しかし、この徹底したこだわりこそ会社のイメージを向上させ、
自社のもつ付加価値の高さを顧客にアピールできれば、
価格競争の渦に簡単には巻き込まれない強固なブランドを作りあげていくことが可能となります。
主な取引先が都内の名だたる企業であることも、この戦略は功を奏しているのでしょう。

ウーバー式に個人顧客も取り込む作戦か?

全車両にデジタコやドライブレコーダー、そしてタブレット端末を導入する・・・という話を聞いて
タクシーアプリをいち早く世に出した会社です。
さらにあのアメリカから乗り込んできたウーバーに対抗し、日交さんもIT技術を駆使した一般個人向けハイヤーサービスを提供する準備をしようとしているに違いない・・・
そう感じました。

6年後の東京オリンピックを見据え、
国際都市東京の成長を縁の下で支える交通機関の役割として、
世界から訪れる御客様をあっと言わせる斬新で上質なサービスのアイディアをいくつか準備したいものです。

東京ハイヤー・タクシー協会会長という立場からも
自社の営業基盤を新しいアイディア創出の実験場にして実績をつくり
その成功モデルを日本全体に波及させていきたいという野心が見え隠れしているようなのですが、みなさんはいかが思われますか?

もしそれが本当なら、これを機会に、社名をちょっと垢抜けたものに変更したらいかがでしょう。

余計なことでしょうかね?

日交さん
時折こういった情報交換は大変刺激になります。

ありがとうございます。

タクシー王子、東京を往く。 日本交通・三代目若社長「新人ドライバー日誌」 (文春e-book)