目 次
昨年問題となった運転に携わる従事者の残業規制問題
乗務員の就労状況に目を光らせる労基対策として、会社が新たな日報を作成しました。そこにはハンドル時間、休憩、待機時間と、報告内容を細かくわけて記載するようになったのです。
この新しい形態の日報を見せられた時は、さすがにこれは面倒だなと思いました。
会社によっては、専用端末で日報を提出しているところもあります。私の会社はまだそうしたデジタル化は程遠く、依然手書きなので、なんとなく仕事が増えた感じがしました。
ハイヤー乗務員たちは、とにかく拘束される時間が長い
新しい日報によって、ハンドルを握っている時間や出勤から退勤までの時間も算出するため、より勤務時間について意識するようになります。
特に拘束されている時間を見ると、改めて、「やっぱり長いなー」と再認識させられました。
すでに就業している人であれば、それでも「しかたない」で終わりでしょうが
これが就活中、あるいは転職先を探している人が見たら、きっと躊躇して考えてしまうことでしょう。いただく報酬を時間で割って・・・などと細かな計算を始めた日には、もうこの手の仕事に就こうという意欲さえ失われてしまうと思います。
正直いって、私はこういう現実を知らずにこの仕事に飛び込んでしまったのです。知ってたらどうしてますかと尋ねられたら、きっと「選ばなかった」と答えるでしょうね。
業界未経験者でも、報酬は前職と変わらなかった
しかし、知らなかったことが幸いし、逆にありがたい、良かったと思うことがあります。
それは、結果的に転職して半年もしない早い段階で前職と変わらない報酬を手にしたことでしょうか。
業界経験があるならまだしも、まったくの未経験、無資格者が、気が付くと「二種免許」を取得して「運転」という技術を身に着け、業界平均の報酬をいただけるようになったのです。当時子供の教育費が掛かる時でしたから、とても助けられました。
人それぞれ置かれた立場によって、良し悪しは相対的に決まるものですが、私の転職については、「成功した」部類に入るといってよいと思います。
ハイヤーの仕事環境について
では、客観的にハイヤーの仕事環境はどうなのかを見みてみましょう。
冒頭、就労時間の長さだけつまんで考えると、この仕事に就きたいなどと思わないと言いました。
だいたい正規の労働時間は8時間で昼休みが1時間となっていますね。もし残業がなければ、一日9時間の拘束で解放されるのが一般的です。
ハイヤーの仕事も、定時に始まり定時に終われば、9時間の拘束となりますが、そうは問屋が卸してくれません。
ここに早出や残業が入ってきますから、普通業務開始の15分前くらいに会社に入ればよしとされる一般職と違い、いろいろな準備に時間を要するのです。
ただし、ハイヤーと、いわゆる出向して役員車を担当する場合とは働き方や時間のやりくりに違いがあるという点を区別してみる必要があります。
●ハイヤーの場合
ハイヤーの乗務員であれば、出社後一発目の仕事に関する情報は、通常前日に配車デスクから伝えられることが多いのですが、かといって出庫時間ギリギリ出社では、行ったことがない場所の場合、あたふたしてしまいます。よって、時間に余裕を持って出庫し、目的地に着いて落ち着きたいとなると、指示書に記載された出庫時間よりも20分から30分早く外に出たいものです。
いい仕事がしたいとなれば、遅くても1時間前には出社して、制服に着替えてスタンバイしていないとはじまりません。
また、出庫時間が定時より早くなる場合もあります。時には「前泊」と呼ぶ、会社に宿泊するケースも出てきます。
特にゴルフ仕事などがそれで、都内にある客宅にお迎えにあがり、郊外のゴルフ場にお送りする場合などは、お迎え時間が朝早くなると、前日から営業所に宿泊しないと対応ができません。
こうした仕事の流れを当たり前のことだとして受け入れられるかどうか、ハイヤーの仕事に就こうとする人なら覚悟しておくべきです。
●企業への出向の場合
一方、企業へ出向し運転業務を請負うとなると、仕事の仕方が変わってきます。;
まず、車を持ち帰ることができる場合、自宅付近に駐車場を借りておき、車に乗車するところから勤務が開始されるので、営業所によらずに現地に行くことができます。
そして業務はその駐車場に車を格納して終了となりますから、営業所に立ち寄らない分、自己管理が要となりますが、時間効率がよく、ハイヤー乗務と比べると体力的にかなり楽になります。
社長や会長車を担当すれば、土日にゴルフの仕事が入ることがよくありますが、お迎えに上がる時間に合わせて家から車で現地に直行できるので、負担は少ないのです。
それにゴルフ仕事は待機時間が長い分、その時間を休養に充てられるという利点もありますから、慣れてくると自分のペースで時間をうまく活用でき、ストレスを軽減できるのです。
また、企業によっては、車の持ち帰りをさせず、営業所で管理するように頼まれることもあります。この場合はハイヤーの時と同様な準備が必要になってきますが、運行スケジュールは比較的余裕をもって組まれていることが多く、乗車する人が決まっていること等、人間関係さえしっかりと構築できれば、精神的負担はかなり軽減され、仕事はやりやすくなると思います。
ハイヤーは待つことが仕事だった
駆け出しの頃は、とにかく一つ仕事を終えると営業所に戻って次の仕事の準備に忙しくしていました。これが1年ほど経過すると、都内の地理もわかってくるし、お客様対応についても要領がわかってきますので、気持ちにも余裕が生まれます。
そして、徐々に隙間時間が増えていくようになります。いわゆる待機時間も乗務員にとっては「仕事」のうち。
ところで、この待機時間は厳密に見ると内容に違いがあります。
営業所で次の仕事に出かけるまでの待機時間。これは稼働していないので、基本給の中に入る時間。
一方、出庫後、ホテルや会食先で、お客様が用事を済ませて再び乗車されるまで車内で待機する時間は、使用側に料金を請求できる時間となります。
夜の会食となると2時間半から長いと4時間くらい車の中で待機しています。
ゴルフになると、ゴルフ場に到着後、プレーが終了するまで平均5時間半。さらにプレー後に1時間から1時間半くらいは身支度等でお客様が出てこないので、トータルで7時間は待つことになります。
まさに、日報をつけると歴然としますが、この仕事はハンドルを握る時間以上に待機している方が時間が長いということがわかります。
それで、ハイヤーの仕事は「待つこと」だと結論づけることができるのです。
待機時間に何をしているのか
こういう話をすると、その待機している間、何をしているのか気になるでしょうね。
雇用側としては、「帰り道の経路や道路状況などしっかりと調べておくこと」といった指導はするものの、始終監視しているわけではないので、各乗務員を信頼し任されているわけです。
「待っている時間、何をしているの?」
このように、お客様に尋ねられることもありました。
これには前もって準備してある文言で無難に回答をして安心させていますが、実際は各乗務員、時間の過ごし方は千差万別です。
ゴルフなど、あらかじめ長時間待機が決まっている場合は、仮眠をとったり、読書、ゲーム、ドラマや映画鑑賞などをしていたり、中にはスマホで公営ギャンブル、株やFXの取引きをしている人もいます。
20代、30代にはお勧めしない仕事
そういう状況を横目でみながら、いつも感じるのは
この仕事は20代、30代にはお勧めしたくない・・・
もしも、子供がこの仕事に就きたいというなら、私は反対します。
この業界に来る人の9割が転職してくる人たち。大卒や20代でハイヤ―乗務員になる人は珍しいのですが、車好きでどうしてもやりたいという人でない限りやるべきではないのです。
若いうちは苦労を買ってでもせよ
この言葉に最も反する就労環境になっているからなんですね。
そんな考えは古いと言われるかもしれませんが、若い人たちには、もっと自分の可能性に挑戦してもらいたいと思う気持ちがあるからなのです。
ハイヤー業界に転職を考えて、この記事を最後までお読みいただいた方へ、この仕事の現状を率直にお伝えしました。