ちょっといいかな・・
月初 業務日報をデスクに提出したとき、事務所の奥の方に陣取っていた所長がおもむろに声をかけてこられたので一瞬ドキッとして
何かしでかしかたか???
特に心当たりはなかったものの、そんな思いが瞬時に心を占領しました。
事務所の片隅に設けた応接室に通されて久しぶりに所長と一対一での面談。
どんな話を切り出されるのかと思ったら
「うちの会社も働き方改革の一環で給与規定を改定せざるを得なくなった。
生活にかかわる重要な改定なだけに、社員一人一人を呼んでことの経緯を説明し、理解と了承をいただいている」・・というのです。
既に組合とは折り合いをつけているらしく、途中労務管理を担当する人を呼び入れて、ざっくり何が変わるのか説明を受けたのですが、給与規定が改定されると実際の実入りがどうなるのか・・・
所長は私の目を覗き込みながら現行の給与が下がるのではないかと心配する私の胸の内をもう見抜いていたようで、すぐさま
「会社としては、なんとか現状を維持できるように変えるつもりだ」
安心してくれと目で訴えるようにして言ってきました。
ただ、結局のところハイヤー乗務員は、正社員であれば固定給ではなく、あくまで基本給プラス 仕事量(具体的には走行距離、拘束時間)で算出される歩合給ですから、改定されても現行の給与が実際どうなるのかは蓋を開けてみなければわからないというのが結論でした。
ついにうちの会社もきたか・・・
「働き方改革」=残業時間規制
という図式しか私の頭の中にはなく、ハイヤー業界ではすでに大手が労働時間規制を始めていることは、時折仕事で一緒になる日本交通や帝都のドライバーさんから話を聞いて知ってはいたものの、今に至るまで自分が所属する会社から正式なお達しがなかったためか、他人事のように気にも留めていなかったのに、いよいよわが身にも改革の波が押し寄せてくることがわかると、今さらですが、この「働き方改革」とは一体何なのか、その詳細を知りたくなりました。
「働き方改革」とは
安倍首相が2016年9月、内閣官房に「働き方改革実現推進室」を設置し、働き方改革の取り組みを提唱して始まったといいます。今から2年も前の話です。
首相官邸のホームページには「働き方改革の実現」と題し以下のような説明がされていますね。
「働き方改革は、一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジ。多様な働き方を可能とするとともに、中間層の厚みを増しつつ、格差の固定化を回避し、成長と分配の好循環を実現するため、働く人の立場・視点で取り組んでいきます。」
なぜ働き方改革をするのか
普段政治にあまり関心を寄せてない者にとって、この改革は「突然降ってわいたような話」にしか思えなかったのですが、なぜ今この時に働き方の改革に乗り出すのか改めて調べてみると、改革の引き金となったのは国立社会保障・人口問題研究所の統計の発表によるものであることがわかりました。
現在の人口増加・減少率のままでは、2050年には総人口9000万人前後、2105年には4500万人まで減少する。そして、実際の働き手となる「労働力人口」は2060年には、ピーク時の半分の4418万人となる見込みなんだとか。
すなわち、これらの統計から、労働力の主力となる生産年齢人口(15~64歳)が想定以上のペースで減少している」ということが判明したのです。このまま現状を放置していると国全体の生産力、国力の低下は避けられないと見たわけですね。
労働力不足解消の対応策
労働力不足解消のためには
1、働き手を増やすこと(労働市場に参加していない女性や高齢者)
2、出生率を上げ、将来の働き手を増やすこと
3、労働生産性を上げること
この3つを対応策を柱とするというのですが、これらを実現するには以下の三つの課題
①長時間労働の問題
②非正規と正社員の格差問題
③労働人口不足の問題
があるために、そこに大きなメスをいれるていくというのが「働き方改革」の関連法に示された施策です。
そして今年(2018年)7月「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が成立しました (平成30年7月6日公布)
(厚生労働省リーフレットから)
1.時間外労働の上限規制が導入される(施行:2019年4月1日~ 中小企業は2020年4月1日~)
2.年次有給休暇の確実な取得が必要(施行:2019年4月1日~
3.正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の禁止(施行:2020年4月1日~中小企業は2021年4月1日~)
厚生労働省のリーフレットにあるように、法の施行時期が明確になっています。
ということは、上記の内容を中心にして改革を確実に推進させていくということにほかなりません。だから、わが所属会社も遅まきながら重い腰をあげて会社としてできる取り組みを始めたということがよくわかりました。
マクロの視点、ミクロの視点
「大局をみる視点」と「個々の事情を考える視点」を考える時、いつも井上陽水の歌「傘がない」の歌詞を思い出します。(ちょっと古すぎですかね)
都会では自殺する若者が増えている
けれども、問題は今日の雨、 傘がない・・・
国は人口減少による生産力、国力の低下を危惧している
けれども、問題は来月の給料 手取りいくらになるか・・・
大局の問題解決を優先すると個別の問題がなおざりにされる場合が出てくる。
同じ船に乗り込んでいる以上、舵をとる船長以下乗組員の意向にしたがわなければ、沈没の恐れは免れない。しかし、乗り込んだ乗客も各自が様々な事情を抱えている。常に全体と個との関係の中におかれている私たちであること立場や環境によって視点が変わることも現実の問題です。
会社経営者はこの改革として打ち出された具体的施策に則り、人材雇用、労務管理の改正を余儀なくさせられるため頭をなやませることでしょう。普段でも会社の利益をいかに向上させるか、知恵を絞っている中で、今回の改革は頭の痛い問題でもあるはずです。
一方、特に中高年齢層を多く抱える職場ゆえに、年齢のせいか、新しいことを始めることに兎角抵抗し、何もしないことがよいこと。敢えて波風立てることは億劫でもあり、平安、平凡、安定を求めようとする勢力が生まれやすい環境でもあります。
しかし、我々が働くハイタク業界のリスクは、最悪の場合人命に損害を与えてしまう危険性をはらんでいることから、職場環境は可能な限りきちんと整備していかなければならないことは言うまでもありません。
目先の利益に固執するあまり、改革が遅れてしまい、あとでとんでもないしっぺ返しに見舞われることが十分あり得るからです。
実害が生じてしまう場合はどうすべきか
もし、この改革のあおりを受けて自分にとっては「改悪」となり、実害が生じる場合はどうすべきでしょうか。
たとえば、残業規制のあおりから減給となる事態が常態化するとなれば、会社に改善策はないか相談してみることは勿論のこと、他にできる方法も考え、最善の方法を選択し行動に移す必要があると思います。
私は、大手ハイタク会社に籍を置きながらダブルワークをしているドライバーを知っています。彼は、土日の残業に規制がかかることがわかると、すぐさま実入りの減る分を単発の派遣バイトに登録して働きだし、見事に補填して現状を改善していました。
結局、残業が減っても給与が変わらない、すなわち、給与自体の上昇がない限り、現状の収入を維持しようとすると、かえって長時間労働が助長されるという矛盾した結果生むようになる・・・
だからといって不平や不満を周辺にまき散らすだけで何も対処しないのとは違い、自分のできる最善の方法を考え即行動に移して問題解決するそのフットワークの軽さは見習うべきことだと思いました。
前途多難
経済が好調で、賃金の上昇が見込めるなら働き方改革は功を奏するでしょうが、来年(2019年)5月に元号が変わり、10月には消費税が10%に引き上げられる予定の流れの中で、経済状況はどうなるのか不透明。
外国人労働力の受け入れ問題も現在国会で審議中ですが、本格受け入れを通して社会がどう変化するのか。
そして、特に経済問題に関しては、かつてのように自国だけの施策で回せた時代はすでに終わっていますから、アメリカや中国をはじめとする周辺諸国との関係も大きく影響されていくでしょう。未来を正確に予測することは不可能ですね。
ということは、全体の動きを意識しつつも、リスクヘッジを考える。卵は同じかごに入れるな! そんな意識の下で個々に対処することが最善策といえそうです。
働き方改革、果ては一億総活躍社会実現の道のりは、簡単ではないことを感じますね。
皆さんの「働き方改革」 現状いかがでしょうか?
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