緊張させられる仕事

ハイヤーの仕事は神経を使うことが多いのですが、
経験を積んでくると
どこにその力点を置くべきかがわかってきます。
これ、「要領」といいますよね

ですから新人時代よりも気持ちが楽になることは確かです。

車庫番(営業所内で常に待機して配車を受ける担当)をやっていれば、
実力と信頼が高まるにつれて様々な仕事が割り振られてきますから
1年もすれば営業所がもっている80%以上の顧客に対応することになると思います。

中には2回、3回と同じお客様をお乗せするケースが出てくるため
落ち着いた対応は経験と共に増してくるでしょうし、時には指名も入るようになります。

そして、3年もすると、業務をそつなくこなせるようになって、
社内の趣味サークルに入って文化やスポーツに興じる人もでてきます。

切磋琢磨し、上へ上へと目指す人にとっては物足りないかもしれませんが
自分の趣味を持ち、じっくり、ゆったりとした人生を謳歌したいと望まれる方なら、ハイヤーの仕事はうってつけだと思います。

緊張する仕事

ハイヤーを利用される方には
お客様(法人)ご自身が利用するケースと、
お客様(法人)が誰かをもてなす目的で利用するケースとの
二つに大別されます。

どちらのケースでも
目的地へ指定された時間内に安全に運行し送り届けることができれば
一応「良し」とされる仕事です。
これは言ってみれば、当然すべき職務ですがね。

ところで、
経験を積み、要領がわかってきても、緊張する仕事があります。
私の場合、後者の仕事のケースで、その中でも、
特に取引、商談が絡んだハイヤー利用の場合がそれです。

指示書を見れば匂って来る

配車時に渡される指示書をみれば
そういった仕事かどうか匂いがするものです。

まず、スケジュールに関する細かな指示が書かれている。
移動時間が分単位になっている。
そして「担当●●」とあれば
もうかなりの確率で
私の言う「緊張する仕事」に分類されるようになります。

商談が絡んで来れば、緻密な段取りがあるのは当然で、
その際に移動手段としてハイヤーを使用するとなれば
そこには「絶対に」失敗があってはならないというプレッシャーが緊張をさらに高めます。

感性のアンテナを張る

ハイヤー乗務員は
運転席に腰かけると、常に正面を向いているために、御客様の顔色をうかがうことができません。
だから、我々は背中で空気を感じとり、
あるいは、後部座席で御客様のとられる所作、音などから
お客様の心の「揺れ」をキャッチし
臨機応変に対応していかなければならないわけです。

特にこの手の「緊張する仕事」では感性のアンテナをめいいっぱい広げるのです。
そうして後ろで交わされる会話にも、
ハンドルを握る手は運転に集中しつつ、そっと耳を傾け
時には予定変更の雲行きを即座にキャッチし、
目的地までの経路変更や
信号待ちでスマホで高速道路の渋滞情報のチェックをいれ
リアルタイムで変わる交通事情にも迅速に対応できるような準備を施します。

(運転中にスマホをいじる時は要注意)

お客様からの予定変更を告げられた時に
おっ、きたな と思ったとしても
何食わぬ顔をして

「かしこまりました」

と軽やかに、どこか自信ありげな響きを持たせて応対すれば
お客様は安心され、自分のクライアントの対応に神経を集中することができるわけです。

さらに、我々も

「あなたの商談の成功を心から願ってエスコートしているんですよ」

というサインを熱く心で送りながら
自分のできる最高のサービスを提供していくと
そんな「思い」が伝わるんですね。

お客様との不思議な連帯感が生れていくのです。
そういう境地に達してきていることを実感できれば
この仕事の勝負は我々に軍配があがること、ほぼ間違いなし。

緊張が充実感に変わる瞬間

このような緊張する仕事が舞い込んでくると
新人時代は生きた心地がしませんでしたが
仕事経験が長くなれば自信につながっていくものですよね。

自分の思い通りにエスコートできた時
緊張が充実感に変わってきます。
それを「やりがい」を感じるというんでしょう。

このような味を占めてしまうと
もう「やめられない仕事」となります。

「私の仕事」となるんですね。

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