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タクシー研修経験こぼれ話
ある大手ハイヤー会社の募集要項を見ていたら、どこをどう間違ったのか、タクシー募集の要項へリンクして飛んでしまいました。
そのサイトで目を惹きつけたのは、あるタクシー乗務員の転職の話。
はじめハイヤー志望であったのに、採用後行われる研修でタクシーに乗ったところ、ハイヤーよりもタクシーの営業に魅せられてしまい、そのままタクシー乗務員として仕事をするようになったというのです。記事に目を走らせながら、タクシー研修を受けていた当時の自分の状況がよみがえってきました
タクシーの魅力とは
「恐れ入ります。新人です。道のご案内お願いします」
教官から、とにかく乗り込んでくるお客様に対し、この挨拶言葉を必ず言うように。そしてお客様に道を教えてもらうようにすること!
口酸っぱく受けた指導に対し、内心では、
――お金を払うのはお客様。なのに道まで教えてくれって、それ、おかしくない?? と反発したものです。
しかし、実際ハンドルを握ってみると、お客様から指示された行先がさっぱりわからず、教えられた決まり文句にどれだけ助けられたことかしれません。
1日に乗車される人が平均で40人にもなってくると、だんだんと人慣れ、道慣れしてきます。
そしておぼろげだった都内の道路も徐々に頭の中に描かれていくにつれ、一、二度案内した経験がある場所を指示された時には、距離に関係なくその場所までの道を知ってる自分がうれしくなって
かしこまりました。○○ですね!
と語気にも力が入り、目的地に到着し料金をいただくと降車の際にお客様から「お世話様」の一言でもいただこうものなら、お役に立てた喜びから、
この仕事って自分に合っているかも・・
と、自分の顔がにやけているのを感じてました。
お客がお客を呼んでくる面白さ
タクシー乗務員さんは皆さん経験されることですが、仕事に流れというものがあるということです。
この「流れ」に乗り始めると、一人のお客さんが降車されると、まるでバトンリレーのようにドアを締め切らないうちから乗り込んでくる。
信号待ちしてたら後ろからドア窓をたたく音がして乗り込んでくる。
たくさん空車が走っているのに、お客様の手を挙げるタイミングと自分の車の動きとがぴたりとあって乗車していただく。
行く先々でお客様からコールがかかり、後部座席に人がいないときがないほど忙しくなることがあります。
タクシーの研修教官が「お客がお客を呼んでくれるよ」と禅問答のように言われた言葉の意味がこういう経験をとおして身に染みてわかるようになると、仕事が面白くなって
やっぱりこの仕事 自分にあってるみたいだな・・
とつぶやいていました。
ツキを失ったときの悲惨さ
ところが、これとは正反対に、まったくもってツキを失ってしまうことがあります。完全に流れが止まるというやつ
・タイミングが悪く自分の前方を走る車にお客をとられていく
・やっと乗り込んできてもワンメーターですぐに降りられる
・うまくご案内できたと思ったらクレームを言われる
・「新人です」といったら、乗車したお客様は舌打ちをしてすぐさま降りられる。
実はお客様が乗り込むと同時に挨拶をして、すぐにメーターをいれるように指導されていたため、発進しないまま降車されるとワンメーター分を自分が負担する羽目になるのです。
こういう痛い目にあうと、今度は「新人です」を省いて挨拶をするようになり、知ったかぶって車を出したはいいが、途中道を間違え、お客様からお目玉を食らう・・やることなすこと裏目裏目、挙句の果てには1時間以上も空車で走り続ける。
まあいいや、俺はハイヤーに乗るんだ
やっぱりタクシーはだめだな・・・
過去に営業職で経験した苦い思い出とも重なって、すっかりネガティブな感情に心が占拠されてしまうのでした。
こういうスランプ状態に陥った時には、私は自分をリセットする意味でスマホのホームボタンのような、ある起点となる場所を設定し、そこに車を回してお客様が乗り込んで来るまで近辺をぐるぐる周回し続けるといったことをしたのです。
それは、たまった水をかきまわして渦をつくりだす原理に似ていて、お客様を呼ぶ流れを作り出せるという、別段根拠ないやり方だったのですが、これが意外に功を奏しました。
こんな一風変わった工夫も自由にできてしまうのがタクシー営業の面白さです。
タクシー営業の壮絶さ
研修とはいえ、当時タクシーの就業時間は正規のタクシー乗務員さんと同じ7時出社、8時出庫、翌日午前4時まで20時間勤務。
もちろん休憩はその中で3時間とるように言われてましたが、今のように労働時間の規制が厳格でなかったので、日によっては2時間も休まずに動いたこともありました。
しかし、どんなに大変な思いをしても営収の精算を終えると明けの日が休みとなるため、仕事と休みのメリハリのきく良いところだと感じています。
深夜の営業 睡魔との戦い
早朝や日中は体の調子がよくて踏ん張りがきくのですが、夕方以降、特に深夜12時をすぎると、睡魔が襲ってきます。これが一番きつかった。眠気がきたら寝たらいいじゃないかと思いますでしょう?
ところが仕事に流れがあることがわかると適当にできなくなるのです。これは私の性分ですね。
特に研修も後半にはいると仕事に慣れてきて変な余裕も生じたせいか余計に眠気が激しく襲ってきました。
もうろうとしながら空車を走らせていると脇に立つ街路樹が人に見えて、
思わず、あ、お客さんだと 体が勝手に反応してハンドルを切って路肩に車を寄せようとするんですよ・・・
研修時に見せられたドライブレコーダーの事故映像で居眠りしてノーブレーキで前方の駐車車両に突っ込んでいくというのがありましたが、こりゃ狂ってる・・・と見た当時鼻で笑い飛ばしていたのに、実際深夜ハンドルを握ると、こういうことをやらかす危険性は大いにありうると感じたものです。
極めつけは、深夜3時ころでしたか
目黒方面の人気も車もない通りで信号待ちしていたら、前方のタクシーが青信号になっても発信しないので、クラクションを鳴らすのもなんだなと思い、右ウインカーをだして追い抜きざまに運転手をにらみつけると、なんと運転手はハンドルを握りしめて固まったまま眠りこけていたのです。
白髪交じりで、もう60をこえていそうな老人でした。
車内で爆睡する姿が気の毒に思えて、怒る気持ちもすっかりなえてしまいました。
ハイヤー乗務員もタクシー研修は必要
わずか2か月あまりのタクシー研修によって、お客様を乗せて走ることへの抵抗感がすっかりなくなり、それが自信となって、ハイヤーの仕事の大きな助けとなったことは言うまでもありません。
私はこれらの経験から、どんな人もハイヤー乗務員を目指すのならタクシー研修を通過すべきだという考えを持つに至りました。
ただし、同期入社数名の中には、お客様の対応がストレスとなり、もうこれ以上俺の車の前で手をあげないでくれ・・となるまで精神的に追い込まれ、挙句の果てには、「行ってきます」といって出庫したまま一日中お客のいないところをぐるぐると走り回り、結局研修期間をまっとうできずに途中リタイヤする人もいたことは事実です。
タクシー運転手に向くタイプとは?
研修を通してタクシーの仕事の面白さや大変さを身に染みて味わったのですが、今ハイヤー乗務員の立場から敢えてタクシー向きの人とはどんなタイプかを言わせていただくなら、サービス業でありながら、運転手ではなく「運転主」たりえる立場、いわゆる個人事業主としての側面が強いため、まずは、やる気 積極性、自由、創意工夫、自立、独立、事業主、メリハリ、マイペース、というキーワードに反応される方ではないでしょうか。
会社組織の中に身をおきますが、サラリーマン的感覚をもっていると長続きできないな・・・というのがこの仕事に対する率直な感想です。
タクシー乗務員の募集は途切れることなく出続けています。
それは一方で、人の出入りが激しいことを物語っているわけです。
従って、この業界に飛び込もうとされるなら、それ相応の「覚悟」がいるということでしょう。
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uchukuziさん
コメントありがとうございます。
なるほどご指摘の通りだと思いますが、
お客様の意向に応えようとする気持ちが強く働いてしまい、違反であるとわかっても行動に出てしまう場合もあって、とても難しい問題ですね。
実は私もそのような傾向があり、気をつけるようにしております。
タクシー業界はコンプライアンスの意識が低いのではないでしょうか?駐停車禁止場所での乗降をするのをなんとも思わないのでしょうか?利益を上げさえすれば良いとの考えならば、ブラック企業どころか暴力団と変わらないような気がします。
レスありがとうございます。まさに今朝ですが、駅前の交差点で
バス停付近にタクシーが停車。その真後ろにバス停に停まりたいバスがいて、そのバスのせいで交差点が渋滞。しかも信号が変わって交差する車も停車という現場を見てしまいました。そんなときの客ってたいていドヤ顔で周囲を見渡すので(だいたい中年期の女性)
ああ、やっぱりタクシーはやりたくないと思ってしまいました。
2種免許はほしいなと思いますが
nyantamaさんが指摘されるようなことが日々行われているため、タクシー乗務員さんたちは苦労が絶えないということでしょうね。神経が図太くないとやっていけない仕事だと思います。
私はタクシー乗務員にはなりたくありません。
客はどこでも好きなところでタクシーをひろい、おりる。これが一般的な常識になっていますが、停車するのが危険な場所でもお構いなしの場合があります。
そんなとき、たとえば後ろに救急車が迫ってきている狭い一方通行で、停車して
料金を精算して、そんな時に限って財布をさがしたり、金を小銭で払おうと数えだしたり、やっぱりないからカードでといってきたら、、、
もう金なんかいらないからおりて!
と言ってしまいそうです